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妻有新聞掲載記事一覧

  • 理想やゴール目標が高すぎるのでは

    「幸せを感じる」ひとりの時間を作る

     前回、「幸せの順番」についてお話しました。今回はその続き、「幸せを感じるために」についてお話します。
     私の勤めている医院は産婦人科が専門ですが、日々さまざまな年代の方の気持ちの不調についてご相談を受けます。理由はいろいろで、友人や家族との人間関係、学校の先生との人間関係、職場の人間関係、過重労働、元々のコミュニケーション能力の低さによる社会への適応障害、自身の病気、更年期のゆらぎ、認知症のはじまりとして、愛する人との死別などで、そして症状としては気持ちが沈む、というものです。
     私もうつ病の既往があるのでよく分かりますが、気持ちが沈んでいる時は自分が幸せから世界で一番遠い存在であると感じます。そして幸せそうにしている人を見ると、余計に自分はどうしてこんなに不幸なのか、と感じます。
     気持ちが落ち込むという状況は、自分以外の誰かがこの世にいるために生じると思います。世界に自分一人しかおらず毎日好きなように過ごせたとしたら、一人ぼっちで寂しいという気持ちさえ持たなければとても幸せで、気分が沈むということはないのではないかと思います。
     ですから、まずは「幸せを感じる」ためには、自分と他人を比べない、他人がどう思おうと自分の幸せを自分の時間を追求する、5分でいいので一人の時間を作る、というのが大事なのかなと思います。
     また、以前、テレビで精神腫瘍医の清水研さんとSUPER EIGHTの安田章大さんが対談をしていたのを見たのですが、そこで清水さんが日常の中での「Must(マスト、「~しなければならない」という意味)を捨てる」と気持ちが楽になる、という話をしていて、とても共感しました。
     精神腫瘍医とは、がん患者及びその家族の精神心理的な苦痛の軽減および療養生活の質の向上を目的とし、薬物療法のみならず、がんに関連する苦悩などに耳を傾ける等、専門知識、技能、態度を用いて、誠意をもった診療に積極的にあたる意思を有した精神科医・心療内科医のことを指します。
     自分もそうですが、気持ちの余裕がなくなってくると、あれをしなくちゃ、これをしなくちゃ、という気持ちで物事をこなしてしまいがちになります。
     たとえば夕飯の支度一つであっても、「疲れてるのに、夕飯の支度をしないといけない」と思いながら作るのと、「疲れて帰ってくるみんなが、美味しい美味しいと言って食べてくれるような夕飯をつくっちゃうぞ~!」と思いながら作るのでは、全然大変さも楽しさも違うのが分かると思います。
     逆に言えば、気持ちに余裕がなくなってしまっているのは、やろうとしていることのハードルが自分にとっては高いのかもしれません。
     夕飯を作ることに気持ちの余裕が持てないのは、食事を作ること自体が苦手なのに「夕飯を作るのはお母さんがやるのが当然」と思っていませんか? 疲れているのに「夕飯のおかずは3品作らないとダメ」「必ず食事は手作りでないとダメ」と思っていませんか? 自分がこうしたい! と思う理想はあるかもしれませんが、その理想やゴール目標が高すぎると幸せを感じることから遠ざかる可能性があるのではないかなと思います。そして、そのハードルの高さにご自分で気づいていない人が多いのが事実です。
     そうはいっても「幸せを感じられない!」という方は是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2024年3月2日号

  • 『ここ松代には全てがあります』

    中村 紀子さん(1974年生まれ)

     仕事や旅で30ヵ国余を巡った。「その国、その国の良さがありましたが、ここに来たら、その良さのすべてがあり、『出会った』という感じです」。早期退職した2022年、大地の芸術祭で訪れた十日町。印象は「こんな良いところがあるんだ」。暮らしてみたいと検索すると『竹所シェアハウス』を知り、生活を始める。それはカール・
    ベンクスさんとの出会いでもあった。
     「いつか本当に好きになったところで暮らしたい」、その思いは飼料用微生物を扱う仕事で外国を転々とする中で募っ
    ていった。だが、生まれ育った新潟県内には目が向かなかった。その契機になったのが大地の芸術祭。さらにカールさんの存在。「ここに住み続けたい」、その思いが増した。
     古民家を雰囲気たっぷりのゲストハウスに改修し、カールさんが運営していた宿『カールベンクス古民家ゲストハウス』を昨年12月引き継いだ。
     1927年建築、まもなく百年を迎える古民家はカールさんの手により、太い梁、漆喰の壁など伝統の和を生かし、そこにドイツ風のヨーロピアン雰囲気を取り入れ、「和を感じ、洋を感じ、なんとも居心地が良い空間です」。2階のゲストルーム2室は、松代の自然と生活が体感できる雰囲気たっぷりの空間だ。
     「人と人の出会いですね。自然はもちろんですが、ここに暮らす人たちの温かさがいいですね。芸術祭で様々な方が訪れているためでしょうか、ここの人たちはいつも温かく付き合っていただき、その雰囲気がとても居心地の良さを出していますね」。さらに「私はここへ来て地域の人に本当にお世話になったので、今後は自分の事業以外でも地域のお役に立てる存在になりたいです」。
    ◆バトンタッチします。
     「南雲真樹さん」

    2024年3月2日号

  • 言説に流されず、だめはダメ

    内憂と外患、今日も悶々と

    斎木 文夫 (年金生活者)

     これを書いている2月28日、自民党の裏金問題をめぐる衆院政倫審が全面公開で開かれることになった。出席者は6人。森、二階、萩生田、下村各氏の出番はない。
     1人1時間くらいの言い訳をさせて、何も明らかにならずに、予算案がスーと通るようになったら、この国ダメだわ。
     今回の政倫審は派閥パーティー裏金に限っているが、茂木氏後援会では2016年~19年の使途不明金が1億2千万円以上、20年~22年の使途不明金が9400万円との報道もある(2月26日『毎日』)。
     茂木氏の資金管理団体から後援会に多額の寄付が流れ、その先が使途不明となっている。資金管理団体と後援会の住所、会計責任者は同一であっても、後援会は政治資金規正法で言う「国会議員関係政治団体」でないから、法的にはお金の使途を明らかにする必要はない。「脱法的行為で悪質だ」と専門家は言う。
     これは、茂木氏だけではなく、自民党だけでもないような気がする。誰か、ぜんぶ調べて明らかにしてもらえないものか。ダメな奴はぜんぶ落としてやる。ことは単純だ。落としてやればいいのだ。
     ロシアのウクライナ侵攻から2年。ウクライナの苦戦は続き、西側諸国の支援疲れも表面化してきた。もしロシアが勝ったら、また、プーチンは核使用をチラつかせており、日本もオンブしている核抑止力という約束事が吹き飛んだら、今の国際秩序は崩壊してしまう。
     もう一つの戦争、イスラエルのパレスチナ自治区侵攻にあたって、アメリカのイスラエル寄りの態度が事態をややこしくしている。
     2つの戦争を前に、日本はどうすべきか。だが、日本の政府与党にそんな力はない。では、私たちはどうしたらよいのか。いくらニュース番組の解説を聞いても、本を読んでも、議論をしても、簡単に答えは出ない。悶々とする毎日だ。
     「お前が心配する必要はない」とそしられるのは承知の上だ。でも、私たちのあらゆる生活場面は政治と関わりがあり、地方政治と中央政治、国内政治と国際政治はつながっているというのが私の考えだ。心配せずにはいられない。
     答えの出ない中、右か左か、簡単で分かりやすい言説に流されるのはやめようと思う。「多様性」にカヅケて「誰がどう考えたっていいじゃないか」と開き直り、思考を停止し、分断を容認することもだ。今は毎日悶々としているのが、私には似合っている。

    2024年3月2日号

  • 高倉山と結東集落

    照井 麻美(津南星空写真部)

     「ゴールデンカムイ」という映画はご覧になりましたか? 明治時代の北海道を舞台にした漫画が原作の映画なのですが、実は津南町にある「見玉公園」がロケ地となっており、冒頭のシーンで数カット見玉公園だと分かる形で使われています。
     私は見玉公園からも見える中津川流域の柱状節理が好きで、今回は見玉よりもう少し上流にある高倉山と結東集落の景色をお届けします。
     撮影時期は去年の2月26日で、東秋山林道に入り見倉集落に到着する手前で撮影しました。例年3月を目の前にすると雪も落ち着き、気持ちがいい晴れの日が続くようになり、雪が積もっていると岩肌の陰影がはっきりと見えるようになり、この時期しか見られない光景を目の当たりにすることができました。
     ふり返ってみると去年の今頃は結東の観測地点で積雪が2mあり、道路の両脇には高い雪壁ができていましたが、今年は去年のおよそ半分です。
     すでに地面の見えた所からはフキノトウが顔を出し始め、雪の季節が少なくて少し寂しいような気もしていますが、気温も高く暖かな日差しを感じると春が待ち遠しくなるのでした。

    2024年3月2日号

  • インバウンドは「雪」

     雪を求める外国からの観光客が目立つようになっている。週末に限らず平日も越後湯沢駅ではその姿が見られ、十日町雪まつりでも外国からの来訪者が見られた。関口市長はさらなるインバウンドを視野に、取り組みを始めている。だが、外国観光客が求める『雪国』と受入れ側の「もてなし」に差異が生じているのでは、と感じる場面に出くわした。「この雪像はどうやって造るのか」、このストレートな疑問に、十日町雪まつりは応えていないのではないか。出来上がった雪像を前に説明したところで、初めての雪国来訪者には、その感覚は実感として分からない。といって、数日間の雪像づくりの短縮版は出来ない。知恵の出し所だろう。
     美術館や博物館には、その企画展に関係した15分ほどの動画コーナーがある。雪像づくりに導入出来ないか。加えて雪像コンテストと合わせ、雪像づくり記録動画をコンテスト応募に義務付け、最優秀賞・優秀賞作品は1年間、市博物館や十日町駅、市役所、JR協力を得て大宮駅サイネージで動画公開など副賞を付ける。「どうやって造るの」に応えることができるのでは。
     さらに、惜しまれつつ2020年に歴史に幕を下ろした『大白倉バイトウ』は、これこそ雪国伝統だろう。あの規模の「炎」を見ることは地元でもなくなり、まして雪に映える「炎の柱」は間違いなく外国観光客の心を捉えるだろう。それも「神聖な炎」として。継続の課題はいくつも上げられるが、その困難性のハードルを乗り越えるのが地域力をバックアップする行政。その行政を資金支援するのは「とおかまち応援団」の民間事業者ではないか。
     雪国観光は確実にインバウンドの誘因要素だ。十日町雪まつりの伝統は「市民手づくりの雪まつり」。ならばその手作り感を前面に出してはどうか。そこに「雪まつり発祥の地」のプライドが再興するだろう。

    2024年3月2日号

  • 民主導支援、「10年先の十日町を」

    合併20年、前年比1.6%増、総予算487億円

     「新市20期目の予算編成。次なるステップに進む予算になっている。5~10年先の新しい十日町の夢を示せたのでは」と関口市長は語った。十日町市は21日、新年度予算案を発表。一般会計は前年当初比1・9%増の348億4千万円(6億3500万円増)。新規事業では私立保育園・こども園支援で紙おむつ処分のエコクリーンセンターでの受入れ(3631万円)など子育て支援、さらに文化観光推進を図り、国宝出土地の笹山遺跡活用をねらいに笹山縄文広場整備基本計画策定(5百万円)を盛り込むなど誘客促進や産業振興に力を入れる。一般会計と特別会計6本の総額は前年比1・6%増の487億2900万円(7億7310万円増)となっている。

    2024年2月24日号

  • 上越市選挙区で日本酒配る

    立憲民主・梅谷守氏

    公選法違反の可能性で窮地に

     立憲現職1期の衆院・梅谷守氏(50)が窮地に立たされている。上越タウンジャーナルなどによると、今年に入り選挙区内である上越市の複数の町内会行事などで日本酒を配っていたことが発覚。選挙区での寄付を禁止する公職選挙法違反の可能性がある。梅谷氏事務所は、各町内会に日本酒を渡したことを認めており、「今後は疑義を生じさせかねない物品などの提供は差し控える」としている。公職選挙法は政治家が選挙区内の有権者に金品を寄付することを禁じ、罰則は罰金50万円以下。一方、新潟県新5区では自民現職・高鳥修一氏(63)が安倍派からの収入544万円を政治資金報告書に記載しない裏金問題で県連会長を辞任している。「どちらの候補も緩みすぎではないか」と有権者の呆れた声が聞こえている。

    2024年2月24日号

  • めざせグランプリ

    第19回クエストカップ

    津南中等3年3チームが全国挑戦

     頂点をめざし全国舞台に挑む。現実社会と連動しながら「生きる力」を育む探究学習プログラム『クエストエデュケーション』。企業が出す課題に学生が挑み、世界の問題解決に繋がる視点を育んでいる。全国大会「第19回クエストカップ」はきょう24日、東京・明治大学中野キャンパスで開催。過去最多の全410校6万994チーム(約8万5千人)がエントリー。書類審査を経て、県立津南中等教育学校(関口和之校長)の中学3年生3チームの全国大会出場が決定している。全国出場チームは全167校305チーム。初日24日にまず企業賞を選び、企業賞を獲得チームは翌25日のセカンドステージの最終審査に進出、最高賞のグランプリを決める。

    2024年2月24日号

  • 「昭和の常識」、現代の非常識だそうだが…

    我が子育てを想う

    松崎 房子 (元ゆずり葉編集委員)

     最近、幼子への虐待のニュースが痛ましい。毒を飲ませたとか、冬の浴室に水を浴びせて閉じ込めたとか! 改めてここに書くのもおぞましい。宝物である子どもに、よくもまあ酷い事が出来るなあと思う。
     でも思い出してみると、自分も我が子に手を挙げたことがあった。一人っ子で育ち、幼くして共に育った経験がない。訳も解らず泣き叫ぶ子どもに、どう対応してよいか分からず理性を失う。長女はお父さん子で、父親が居ないと不安になるらしくむずかしかった。
     当時は戦後の高度成長期で、企業戦士と言われ、男親はろくに家にいない。家庭は母親が守るのが当然とされた。夫は兄の事業を手伝うべく、十日町への転職を進めていたので、月の半分を東京と十日町を掛け持ちしていた。 
     幼児期の娘は父親が留守になると、途端に体調を崩しぐずり出す。自家中毒との事。未熟だった私は、娘より私の方が泣きたい位で、思わず頬を平手打ちした。娘も痛かっただろうが、打った私のほうも嫌な思いと痛みが心に残っている。
     次女はもう少し成長した頃、三~四年生頃だったろうか、普段から食べ物に関しては特に厳しくしていた。ある日、その次女が思わず一言「食うものがねぇ」といったのだ。即座に平手打ちをした。そんなに強くしたつもりは無かったのに、次女はすとんと尻もちをついて座り込んだ。これには私も驚いたし、傍にいた姉・兄ともにびっくりして恐れおののいた。
     何十年もたったある時、次女が話した。自分でもすぐにまずい!! と思ったが、即、平手が飛んできたとか。当人もそばにいた姉・兄も決して食べ物には不平を以前にもまして言わなくなった。
     女の子に挟まれた息子は、悪さをしなかったわけでもなく、叱られるようなことも言ったにも拘わらず、罰を与えられなかった。いたずら盛りの頃、空手を習っていた息子は、私が頬を打とうとしても、拳を握った手をさっと自分の顔と頭をかばうように私の手を遮った。さすがに頭や顔は打ってはいけないと思って、彼のお尻に手を回すとその手首を握って押さえつけられた。目的は果たせないままだった。
     そのうえ今は、パソコンだ、スマホだと、何かにつけて彼に頼っていて、叱られるのはこちらばかり。ついこの間も「そんな暗いところで小さな字を見ていると、目を悪くするよ」と注意すると、さっそくスマホ開いて【そんなことはない、読めてさえいれば明るさは関係ない】とのたまう。
    昭和の常識、現代の非常識だそうだ。時代も変わったものだ。

    2024年2月24日号

  • 『果実は命をつなぐ』

    大出 恭子さん(1971年生まれ)

     朝起きて、家の側の木から熟れた桃を取り、食べ、その種は土に返す…
    ニュージーランドでお世話になったガイトン家族
    は、自然と共にある暮しの日々。
     「これだっ」、漠然と求めていたものが目の前にあった。言葉にすると『フードフォレスト』。果樹を植え、完熟果物を食べ、その種は土に返し、種から新たな木が育ち、鳥や動物、人間に果実を与え、その種は再び土に帰り、また新たな果樹が育つ。
     8年前、その思いを形にした。『フード・フォレスト・ジャパン』を立ち上げる。松代や松之山に求めた土地や借地に15種、5百本の果樹を植える。「密植です。山の自然の木々は様々な樹種が密植しています。同じように果樹も自然の中で育ち、雪や風雨などで自然剪定され、育っていきます。実った果物は鳥や動物が食べ、その実はまた自然に帰ります。この鳥や動物は、私のスタッフと思っています」。
     いま会員100人余のフード・フォレスト・ジャパン。毎年植樹を行い、面積を増やしている。「まだ私たちの口に入る果物は少ないですが、明日採ろうかなと思うと、翌日には全て果物がなくなっていたなど、鳥や動物の感覚はすごいですね。でもそれも自然ですね」。
     大学卒業後、南魚沼の国際大学に就職し、英語の熟度が増し、今は新潟県農業大学校の英語講師。大学校で農業分野の知見が深まり、福岡正信著『わら一本の革命』に出会う。十日町に移住し始めた農業、ニュージーランドでの体験、フード・フォレスト・ジャパンの立上げ、すべてがつながっている。食と貧困問題にも取り組みNPOにいがたNGOネットワークのメンバー。「果実は世界の貧困を救います。種はゴミではありません。土に返すことで命をつないでくれます」。
    ◆バトンタッチします。
     「中村紀子さん」

    2024年2月24日号

  • 理想やゴール目標が高すぎるのでは

    「幸せを感じる」ひとりの時間を作る

     前回、「幸せの順番」についてお話しました。今回はその続き、「幸せを感じるために」についてお話します。
     私の勤めている医院は産婦人科が専門ですが、日々さまざまな年代の方の気持ちの不調についてご相談を受けます。理由はいろいろで、友人や家族との人間関係、学校の先生との人間関係、職場の人間関係、過重労働、元々のコミュニケーション能力の低さによる社会への適応障害、自身の病気、更年期のゆらぎ、認知症のはじまりとして、愛する人との死別などで、そして症状としては気持ちが沈む、というものです。
     私もうつ病の既往があるのでよく分かりますが、気持ちが沈んでいる時は自分が幸せから世界で一番遠い存在であると感じます。そして幸せそうにしている人を見ると、余計に自分はどうしてこんなに不幸なのか、と感じます。
     気持ちが落ち込むという状況は、自分以外の誰かがこの世にいるために生じると思います。世界に自分一人しかおらず毎日好きなように過ごせたとしたら、一人ぼっちで寂しいという気持ちさえ持たなければとても幸せで、気分が沈むということはないのではないかと思います。
     ですから、まずは「幸せを感じる」ためには、自分と他人を比べない、他人がどう思おうと自分の幸せを自分の時間を追求する、5分でいいので一人の時間を作る、というのが大事なのかなと思います。
     また、以前、テレビで精神腫瘍医の清水研さんとSUPER EIGHTの安田章大さんが対談をしていたのを見たのですが、そこで清水さんが日常の中での「Must(マスト、「~しなければならない」という意味)を捨てる」と気持ちが楽になる、という話をしていて、とても共感しました。
     精神腫瘍医とは、がん患者及びその家族の精神心理的な苦痛の軽減および療養生活の質の向上を目的とし、薬物療法のみならず、がんに関連する苦悩などに耳を傾ける等、専門知識、技能、態度を用いて、誠意をもった診療に積極的にあたる意思を有した精神科医・心療内科医のことを指します。
     自分もそうですが、気持ちの余裕がなくなってくると、あれをしなくちゃ、これをしなくちゃ、という気持ちで物事をこなしてしまいがちになります。
     たとえば夕飯の支度一つであっても、「疲れてるのに、夕飯の支度をしないといけない」と思いながら作るのと、「疲れて帰ってくるみんなが、美味しい美味しいと言って食べてくれるような夕飯をつくっちゃうぞ~!」と思いながら作るのでは、全然大変さも楽しさも違うのが分かると思います。
     逆に言えば、気持ちに余裕がなくなってしまっているのは、やろうとしていることのハードルが自分にとっては高いのかもしれません。
     夕飯を作ることに気持ちの余裕が持てないのは、食事を作ること自体が苦手なのに「夕飯を作るのはお母さんがやるのが当然」と思っていませんか? 疲れているのに「夕飯のおかずは3品作らないとダメ」「必ず食事は手作りでないとダメ」と思っていませんか? 自分がこうしたい! と思う理想はあるかもしれませんが、その理想やゴール目標が高すぎると幸せを感じることから遠ざかる可能性があるのではないかなと思います。そして、そのハードルの高さにご自分で気づいていない人が多いのが事実です。
     そうはいっても「幸せを感じられない!」という方は是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2024年3月2日号

  • 『ここ松代には全てがあります』

    中村 紀子さん(1974年生まれ)

     仕事や旅で30ヵ国余を巡った。「その国、その国の良さがありましたが、ここに来たら、その良さのすべてがあり、『出会った』という感じです」。早期退職した2022年、大地の芸術祭で訪れた十日町。印象は「こんな良いところがあるんだ」。暮らしてみたいと検索すると『竹所シェアハウス』を知り、生活を始める。それはカール・
    ベンクスさんとの出会いでもあった。
     「いつか本当に好きになったところで暮らしたい」、その思いは飼料用微生物を扱う仕事で外国を転々とする中で募っ
    ていった。だが、生まれ育った新潟県内には目が向かなかった。その契機になったのが大地の芸術祭。さらにカールさんの存在。「ここに住み続けたい」、その思いが増した。
     古民家を雰囲気たっぷりのゲストハウスに改修し、カールさんが運営していた宿『カールベンクス古民家ゲストハウス』を昨年12月引き継いだ。
     1927年建築、まもなく百年を迎える古民家はカールさんの手により、太い梁、漆喰の壁など伝統の和を生かし、そこにドイツ風のヨーロピアン雰囲気を取り入れ、「和を感じ、洋を感じ、なんとも居心地が良い空間です」。2階のゲストルーム2室は、松代の自然と生活が体感できる雰囲気たっぷりの空間だ。
     「人と人の出会いですね。自然はもちろんですが、ここに暮らす人たちの温かさがいいですね。芸術祭で様々な方が訪れているためでしょうか、ここの人たちはいつも温かく付き合っていただき、その雰囲気がとても居心地の良さを出していますね」。さらに「私はここへ来て地域の人に本当にお世話になったので、今後は自分の事業以外でも地域のお役に立てる存在になりたいです」。
    ◆バトンタッチします。
     「南雲真樹さん」

    2024年3月2日号

  • 言説に流されず、だめはダメ

    内憂と外患、今日も悶々と

    斎木 文夫 (年金生活者)

     これを書いている2月28日、自民党の裏金問題をめぐる衆院政倫審が全面公開で開かれることになった。出席者は6人。森、二階、萩生田、下村各氏の出番はない。
     1人1時間くらいの言い訳をさせて、何も明らかにならずに、予算案がスーと通るようになったら、この国ダメだわ。
     今回の政倫審は派閥パーティー裏金に限っているが、茂木氏後援会では2016年~19年の使途不明金が1億2千万円以上、20年~22年の使途不明金が9400万円との報道もある(2月26日『毎日』)。
     茂木氏の資金管理団体から後援会に多額の寄付が流れ、その先が使途不明となっている。資金管理団体と後援会の住所、会計責任者は同一であっても、後援会は政治資金規正法で言う「国会議員関係政治団体」でないから、法的にはお金の使途を明らかにする必要はない。「脱法的行為で悪質だ」と専門家は言う。
     これは、茂木氏だけではなく、自民党だけでもないような気がする。誰か、ぜんぶ調べて明らかにしてもらえないものか。ダメな奴はぜんぶ落としてやる。ことは単純だ。落としてやればいいのだ。
     ロシアのウクライナ侵攻から2年。ウクライナの苦戦は続き、西側諸国の支援疲れも表面化してきた。もしロシアが勝ったら、また、プーチンは核使用をチラつかせており、日本もオンブしている核抑止力という約束事が吹き飛んだら、今の国際秩序は崩壊してしまう。
     もう一つの戦争、イスラエルのパレスチナ自治区侵攻にあたって、アメリカのイスラエル寄りの態度が事態をややこしくしている。
     2つの戦争を前に、日本はどうすべきか。だが、日本の政府与党にそんな力はない。では、私たちはどうしたらよいのか。いくらニュース番組の解説を聞いても、本を読んでも、議論をしても、簡単に答えは出ない。悶々とする毎日だ。
     「お前が心配する必要はない」とそしられるのは承知の上だ。でも、私たちのあらゆる生活場面は政治と関わりがあり、地方政治と中央政治、国内政治と国際政治はつながっているというのが私の考えだ。心配せずにはいられない。
     答えの出ない中、右か左か、簡単で分かりやすい言説に流されるのはやめようと思う。「多様性」にカヅケて「誰がどう考えたっていいじゃないか」と開き直り、思考を停止し、分断を容認することもだ。今は毎日悶々としているのが、私には似合っている。

    2024年3月2日号

  • 高倉山と結東集落

    照井 麻美(津南星空写真部)

     「ゴールデンカムイ」という映画はご覧になりましたか? 明治時代の北海道を舞台にした漫画が原作の映画なのですが、実は津南町にある「見玉公園」がロケ地となっており、冒頭のシーンで数カット見玉公園だと分かる形で使われています。
     私は見玉公園からも見える中津川流域の柱状節理が好きで、今回は見玉よりもう少し上流にある高倉山と結東集落の景色をお届けします。
     撮影時期は去年の2月26日で、東秋山林道に入り見倉集落に到着する手前で撮影しました。例年3月を目の前にすると雪も落ち着き、気持ちがいい晴れの日が続くようになり、雪が積もっていると岩肌の陰影がはっきりと見えるようになり、この時期しか見られない光景を目の当たりにすることができました。
     ふり返ってみると去年の今頃は結東の観測地点で積雪が2mあり、道路の両脇には高い雪壁ができていましたが、今年は去年のおよそ半分です。
     すでに地面の見えた所からはフキノトウが顔を出し始め、雪の季節が少なくて少し寂しいような気もしていますが、気温も高く暖かな日差しを感じると春が待ち遠しくなるのでした。

    2024年3月2日号

  • インバウンドは「雪」

     雪を求める外国からの観光客が目立つようになっている。週末に限らず平日も越後湯沢駅ではその姿が見られ、十日町雪まつりでも外国からの来訪者が見られた。関口市長はさらなるインバウンドを視野に、取り組みを始めている。だが、外国観光客が求める『雪国』と受入れ側の「もてなし」に差異が生じているのでは、と感じる場面に出くわした。「この雪像はどうやって造るのか」、このストレートな疑問に、十日町雪まつりは応えていないのではないか。出来上がった雪像を前に説明したところで、初めての雪国来訪者には、その感覚は実感として分からない。といって、数日間の雪像づくりの短縮版は出来ない。知恵の出し所だろう。
     美術館や博物館には、その企画展に関係した15分ほどの動画コーナーがある。雪像づくりに導入出来ないか。加えて雪像コンテストと合わせ、雪像づくり記録動画をコンテスト応募に義務付け、最優秀賞・優秀賞作品は1年間、市博物館や十日町駅、市役所、JR協力を得て大宮駅サイネージで動画公開など副賞を付ける。「どうやって造るの」に応えることができるのでは。
     さらに、惜しまれつつ2020年に歴史に幕を下ろした『大白倉バイトウ』は、これこそ雪国伝統だろう。あの規模の「炎」を見ることは地元でもなくなり、まして雪に映える「炎の柱」は間違いなく外国観光客の心を捉えるだろう。それも「神聖な炎」として。継続の課題はいくつも上げられるが、その困難性のハードルを乗り越えるのが地域力をバックアップする行政。その行政を資金支援するのは「とおかまち応援団」の民間事業者ではないか。
     雪国観光は確実にインバウンドの誘因要素だ。十日町雪まつりの伝統は「市民手づくりの雪まつり」。ならばその手作り感を前面に出してはどうか。そこに「雪まつり発祥の地」のプライドが再興するだろう。

    2024年3月2日号

  • 民主導支援、「10年先の十日町を」

    合併20年、前年比1.6%増、総予算487億円

     「新市20期目の予算編成。次なるステップに進む予算になっている。5~10年先の新しい十日町の夢を示せたのでは」と関口市長は語った。十日町市は21日、新年度予算案を発表。一般会計は前年当初比1・9%増の348億4千万円(6億3500万円増)。新規事業では私立保育園・こども園支援で紙おむつ処分のエコクリーンセンターでの受入れ(3631万円)など子育て支援、さらに文化観光推進を図り、国宝出土地の笹山遺跡活用をねらいに笹山縄文広場整備基本計画策定(5百万円)を盛り込むなど誘客促進や産業振興に力を入れる。一般会計と特別会計6本の総額は前年比1・6%増の487億2900万円(7億7310万円増)となっている。

    2024年2月24日号

  • 上越市選挙区で日本酒配る

    立憲民主・梅谷守氏

    公選法違反の可能性で窮地に

     立憲現職1期の衆院・梅谷守氏(50)が窮地に立たされている。上越タウンジャーナルなどによると、今年に入り選挙区内である上越市の複数の町内会行事などで日本酒を配っていたことが発覚。選挙区での寄付を禁止する公職選挙法違反の可能性がある。梅谷氏事務所は、各町内会に日本酒を渡したことを認めており、「今後は疑義を生じさせかねない物品などの提供は差し控える」としている。公職選挙法は政治家が選挙区内の有権者に金品を寄付することを禁じ、罰則は罰金50万円以下。一方、新潟県新5区では自民現職・高鳥修一氏(63)が安倍派からの収入544万円を政治資金報告書に記載しない裏金問題で県連会長を辞任している。「どちらの候補も緩みすぎではないか」と有権者の呆れた声が聞こえている。

    2024年2月24日号

  • めざせグランプリ

    第19回クエストカップ

    津南中等3年3チームが全国挑戦

     頂点をめざし全国舞台に挑む。現実社会と連動しながら「生きる力」を育む探究学習プログラム『クエストエデュケーション』。企業が出す課題に学生が挑み、世界の問題解決に繋がる視点を育んでいる。全国大会「第19回クエストカップ」はきょう24日、東京・明治大学中野キャンパスで開催。過去最多の全410校6万994チーム(約8万5千人)がエントリー。書類審査を経て、県立津南中等教育学校(関口和之校長)の中学3年生3チームの全国大会出場が決定している。全国出場チームは全167校305チーム。初日24日にまず企業賞を選び、企業賞を獲得チームは翌25日のセカンドステージの最終審査に進出、最高賞のグランプリを決める。

    2024年2月24日号

  • 「昭和の常識」、現代の非常識だそうだが…

    我が子育てを想う

    松崎 房子 (元ゆずり葉編集委員)

     最近、幼子への虐待のニュースが痛ましい。毒を飲ませたとか、冬の浴室に水を浴びせて閉じ込めたとか! 改めてここに書くのもおぞましい。宝物である子どもに、よくもまあ酷い事が出来るなあと思う。
     でも思い出してみると、自分も我が子に手を挙げたことがあった。一人っ子で育ち、幼くして共に育った経験がない。訳も解らず泣き叫ぶ子どもに、どう対応してよいか分からず理性を失う。長女はお父さん子で、父親が居ないと不安になるらしくむずかしかった。
     当時は戦後の高度成長期で、企業戦士と言われ、男親はろくに家にいない。家庭は母親が守るのが当然とされた。夫は兄の事業を手伝うべく、十日町への転職を進めていたので、月の半分を東京と十日町を掛け持ちしていた。 
     幼児期の娘は父親が留守になると、途端に体調を崩しぐずり出す。自家中毒との事。未熟だった私は、娘より私の方が泣きたい位で、思わず頬を平手打ちした。娘も痛かっただろうが、打った私のほうも嫌な思いと痛みが心に残っている。
     次女はもう少し成長した頃、三~四年生頃だったろうか、普段から食べ物に関しては特に厳しくしていた。ある日、その次女が思わず一言「食うものがねぇ」といったのだ。即座に平手打ちをした。そんなに強くしたつもりは無かったのに、次女はすとんと尻もちをついて座り込んだ。これには私も驚いたし、傍にいた姉・兄ともにびっくりして恐れおののいた。
     何十年もたったある時、次女が話した。自分でもすぐにまずい!! と思ったが、即、平手が飛んできたとか。当人もそばにいた姉・兄も決して食べ物には不平を以前にもまして言わなくなった。
     女の子に挟まれた息子は、悪さをしなかったわけでもなく、叱られるようなことも言ったにも拘わらず、罰を与えられなかった。いたずら盛りの頃、空手を習っていた息子は、私が頬を打とうとしても、拳を握った手をさっと自分の顔と頭をかばうように私の手を遮った。さすがに頭や顔は打ってはいけないと思って、彼のお尻に手を回すとその手首を握って押さえつけられた。目的は果たせないままだった。
     そのうえ今は、パソコンだ、スマホだと、何かにつけて彼に頼っていて、叱られるのはこちらばかり。ついこの間も「そんな暗いところで小さな字を見ていると、目を悪くするよ」と注意すると、さっそくスマホ開いて【そんなことはない、読めてさえいれば明るさは関係ない】とのたまう。
    昭和の常識、現代の非常識だそうだ。時代も変わったものだ。

    2024年2月24日号

  • 『果実は命をつなぐ』

    大出 恭子さん(1971年生まれ)

     朝起きて、家の側の木から熟れた桃を取り、食べ、その種は土に返す…
    ニュージーランドでお世話になったガイトン家族
    は、自然と共にある暮しの日々。
     「これだっ」、漠然と求めていたものが目の前にあった。言葉にすると『フードフォレスト』。果樹を植え、完熟果物を食べ、その種は土に返し、種から新たな木が育ち、鳥や動物、人間に果実を与え、その種は再び土に帰り、また新たな果樹が育つ。
     8年前、その思いを形にした。『フード・フォレスト・ジャパン』を立ち上げる。松代や松之山に求めた土地や借地に15種、5百本の果樹を植える。「密植です。山の自然の木々は様々な樹種が密植しています。同じように果樹も自然の中で育ち、雪や風雨などで自然剪定され、育っていきます。実った果物は鳥や動物が食べ、その実はまた自然に帰ります。この鳥や動物は、私のスタッフと思っています」。
     いま会員100人余のフード・フォレスト・ジャパン。毎年植樹を行い、面積を増やしている。「まだ私たちの口に入る果物は少ないですが、明日採ろうかなと思うと、翌日には全て果物がなくなっていたなど、鳥や動物の感覚はすごいですね。でもそれも自然ですね」。
     大学卒業後、南魚沼の国際大学に就職し、英語の熟度が増し、今は新潟県農業大学校の英語講師。大学校で農業分野の知見が深まり、福岡正信著『わら一本の革命』に出会う。十日町に移住し始めた農業、ニュージーランドでの体験、フード・フォレスト・ジャパンの立上げ、すべてがつながっている。食と貧困問題にも取り組みNPOにいがたNGOネットワークのメンバー。「果実は世界の貧困を救います。種はゴミではありません。土に返すことで命をつないでくれます」。
    ◆バトンタッチします。
     「中村紀子さん」

    2024年2月24日号