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こころとからだの学校一覧

  • 生活習慣病で卵巣の老化が早まる

    卵巣の卵子は日に日に減少している

    Vol 83

     先日、家族でテレビを見ていたら、アルツハイマー病の新しい薬が開発されたとのニュースを耳にしました。アミロイドβ(ベータ)という脳細胞につくたんぱく質のゴミが多くなると発症するリスクが高まっていくのですが、今回の薬はこのたまったごみを取り除いてくれるようです。
     さて、高血圧や糖尿病のように、ある程度食生活や運動を心がければこのゴミがたまりにくくなるだけなのか、それとも遺伝子レベルで認知症という病態が今後解明されていくのか興味のあるところだね、と家族で話していました。今現在分かっていることは、アミロイドβというゴミは年齢が行けば行くほど溜まっていくものなので、アルツハイマー病はある意味、人間が長生きするようになったために現れた病気ともいえます。
     「老化」は多かれ少なかれ、必ず誰しもが経験する現象です。女性のからだでいえば、一番老化に影響するのは卵巣です。見た目が実年齢よりも若い人が世の中にいて美魔女などと言われたりしていますが、残念ながらどのくらい卵巣が老化しているかは、その人の見た目には表れません。よく巷で、「卵巣が若返って妊娠する方法」としていろいろなものを目にしますが、産婦人科医の誰に聞いても「どんなに頑張っても実年齢以上に卵巣が若返る方法はない!」というのが事実だということを知っておいてください。
     卵巣が老化することを他の言葉に言い換えれば、卵巣の中に受精できる能力のある卵子がどのくらい残っているか、です。その能力のある活きのいい卵子がなくなれば、女性は閉経を迎えるわけです。ここで女性の卵巣の中にどの位もともと卵子があるのか、それがどう減っていくのかをちょっとお話します。
     赤ちゃんとしてお母さんのおなかの中にいたころに、女性は卵子を卵巣の中に蓄えます。その数、妊娠20週頃に約700万個。しかし生まれる頃には1分の1の200万個ほどになります。生まれた後も初潮が来るまでに自然と消失し、思春期の頃には20~30万個にまで減少します。その後も、毎日20~30個が自然に消えていくほか、月経のたびに約1000個の卵子が減っていきます。その結果、初潮から300回くらい月経を繰り返している35歳ごろには2~3万個、つまり生まれた時の1~2%になってしまいます。
     いつか子どもがほしいと思っているけれど、経済的にとか仕事が忙しいからとか、いろいろな理由でまだまだと思っているうちに、どんどん卵巣の中の卵子は泡のように消えていってしまっているのです。
     でも40歳を超えても妊娠する人はいるじゃないか、と思う人もいるでしょう。そのようなケースは珍しいと思った方が良いです。自分にも当てはまるはず、と思わないほうが良いでしょう。40歳になっても妊娠する、どころか最初に話した生活習慣病のように、若いうちから自分の身体を気づかって過ごせなければ、血管や内臓の老化だけでなく卵巣の、そしてその中の卵子の老化が進み、30代でも妊娠しにくい可能性が出てきます。
    必要以上に卵巣や卵子の老化を自ら進めてしまわないように、今からできること、知っておきましょう。今からでも老化を最小限にしたい人は、私の著書『結婚していない。けど、いつか子どもがほしい人が今できること』を読んでみてくださいね。
     自分の身体に関心と責任を持って、若い時から大事にすることをおすすめします! 本を読んで心配なことがあった時には是非いつでも御相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2023年10月7日号

  • プレ・コンセプション・ケア(妊娠前心身ケア)

    妊娠出産は一つの通過点、その後の人生を

    Vol 82

     この三連休、津南駅前の温泉宿・雪国さんに家族でお泊りに行きました。9月は夫と姉の二人の誕生日、いつもお世話になっている母への敬老感謝、そして私の本の出版記念、毎日頑張っている娘のご苦労さま会でした。源泉かけ流しの温泉でゆっくり足を延ばして頭から足の先まで温まり、お風呂上りに裏山の冷たい湧水をいただいてツルスベ肌に。骨まで柔らかい鯉こくに津南産のコシヒカリと漬物を頂いてお腹も大満足。一晩に2回もお産に呼ばれて出たり入ったりしたのに、よくしていただいて本当にありがとうございました。朝のお産に呼ばれて車窓から見た津南の川や山は美しく、ここに生まれて良かったと思いましたよ!
     さて、今回9月13日にダイヤモンド社より出版になった本のご紹介。『結婚していない。けど、いつか子どもが欲しい人が今できること』(税込1650円)と、長いタイトルですが、まさにその内容をズバリ知って欲しくてつけました。
     昨今「プレコンセプションケア」という言葉が良く聞かれるようになってきましたが、本の中でしつこく明記していないまでも、この本は「プレコンセプションケア」本です。プレコンセプションケアとは、これまでよ
    く使われてきた「ブライダルチェック」に似た言葉で、プレ=前、コンセプション=妊娠、という意味から分かるように「妊娠する前から自分(やパートナー)の心身面や生活を見直してケアしよう」という試みです。
     これを読んでくださっている皆さんは、自分の月経が他の人と違うのか同じなのか気にしたことはありますか? 普通だと思っている自分の月経に、妊娠を遠ざけてしまう病気からのメッセージが隠れているかもしれません。
     年齢がいけばいくほど妊娠しにくいと知っている人は多いと思いますが、それが本当のところ何歳から拍車がかかって、どうしてそんなことが起こるのかを知っていますか? 健康診断でBやC判定だけど、経過観察になっているような異常が実は妊娠してから大変なことになるということを知らずに、次回の健康診断までに何とかすればよいと延ばし延ばしにしていませんか?
     男性はいつまでも女性を妊娠させる能力があるし、年齢と精子の老化は関係ないと思っていませんか? 普段何気なくしていることが、実年齢以上に体を老化させて、卵子や精子の老化を引き起こしていると知っていますか? 海外の先進国では、今皆さんに質問したような内容は、10代のうちに性教育で教えてもらっている常識です。
     また、プレコンセプションケアには、妊娠出産育児は自分やパートナーの生活をどう変えていくのか変えられるのか、妊婦健診や出産のための費用はいくらかかるのか、金銭面や育児の支援はどうしていくのか、などをあらかじめ医療機関や行政や福祉などに相談することも含まれます。
     このケアは、ただ単に順調な妊娠出産をめざすだけではなく、妊娠出産は1つの通過点として、その後の人生を心身ともに健康で過ごすために行うケアなのです。
     だからこの本は、妊娠をめざしている年齢の人だけでなく、更年期を迎える年齢の人、思春期を迎えたお子さんをお持ちの人、男性にも読んでいただきたいと思っています。
     未来の自分やパートナーのために今からできることが満載です。ブックス平沢さんも置いてくださっているとのこと、ぜひ一度手に取ってみてください!! それでも解決しないことがあったら是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2023年9月23日号

  • 気分の変動・イライラ・気分が沈む…月経前症候群

    お母さんを守ることが我が子を守ること

    たかき医院・仲栄美子医師

     9月の第1土日は毎年、たかき医院のある土市地区は秋祭りです。今年は4年ぶりに神社境内で演芸大会が催されるなど、にぎやかなお祭りになりました。演芸大会の開始時間頃には神社境内は「ここは渋谷か?」と思うほどでびっくりしました。日中は、暑い中たくさんの子どもたちが顔を真っ赤にしながら、神輿を引っ張っている活気と笑顔に、元気をもらいました。子どもたちが嬉しそうにしている姿は良いですね。
     さて、今日は以前もお話したPMSとPMDDについて最新のお話。PMSは月経前症候群のことで、月経前3~10日間に出る様々な精神的(気分の変動、すぐイライラする、気分が沈むなど)あるいは身体的症状(下腹部が張る、疲労感、腰痛、頭痛、むくみ、乳房の張りなど)のことで、月経が来ると減弱あるいは消失するもの。PMDDは月経前不快気分障害のことで、PMSのうち精神症状が強い場合を指します。
     PMSもPMDDも外来でお手伝いしていることは主に薬物療法になるかと思いますが、サプリ、漢方治療、低用量ピル、抗うつ剤など多数ある中から、その人の訴えに合わせて処方しています。 
     実はこの二つは多種の要因が複雑にかかわっており、いまだにはっきりとした発症原因が分かっていないのです。そのため多数の治療薬物が存在しています。PMSはビタミンEやカルシウムの摂取が症状を和らげるとか、PMDDの強い人は夜勤回数の多い人やストレスを多く感じている人であるという報告も出ています。
     では最近、高校生などの若い人たちにPMSが増えてきているように感じますが、それはなぜなのでしょう。
     PMDDに関していうと、その症状に悩む人の多くが、幼少時に両親の離婚、父母の不仲、親がアルコール依存や精神疾患を患っている、いじめ、DV(身近な人からの暴力)、性的虐待、ネグレクト(育児放棄)などを体験しているというのです。虐待までいかないにしても、もしかしたら、毎月お母さんのPMSやPMDDによって子どもにつらく当たってしまうことが、将来その子どもに月経が来た時のPMSやPMDDを引き起こす可能性につながるかもしれません。
     お母さんが月経が来ることに対して、とてもつらい気持ちを持っていることが伝われば、子どもは自分の月経もつらいに違いない、と思い込んでしまうでしょう。子ども時代に笑って過ごせること、その笑顔を家族が、特にお母さんが守ってあげることが、女の子の月経が来てから先の40年を元気に過ごせることに繋がっていきます。
     40年は人生の半分、もしかしたら半分以上の長い期間です。この長い期間の大半を月経のために侵されるなんて、大変なことだと思いませんか?そしてお母さんたちがPMDDを強く感じるほどのストレスはどこにあって、それをどう助けてあげたらよいのでしょう。
    これを踏まえると、PMDDの治療には、今までにお話した薬物療法のほかにカウンセリングや生活指導も大事であるというのが分かっていただけるかと思います。
     PMSやPMDDにはトリプトファンやGABAやビタミンB6の多い食品が良いのではないかという話もあります。トリプトファンは鰹節・高野豆腐・大豆・きな粉、など、GABAを多く含む食品はトマト缶詰(ホール)・ジャガイモ・かぼちゃ・ブドウ、など、ビタミンB6はとうがらし・米・にんにく・バジルなどです。
     是非取り入れてみていただき、それでも自分では限界と思ったら、抱え込まずに早く相談してくださいね。

    2023年9月9日号

  • 生活習慣病で卵巣の老化が早まる

    卵巣の卵子は日に日に減少している

    Vol 83

     先日、家族でテレビを見ていたら、アルツハイマー病の新しい薬が開発されたとのニュースを耳にしました。アミロイドβ(ベータ)という脳細胞につくたんぱく質のゴミが多くなると発症するリスクが高まっていくのですが、今回の薬はこのたまったごみを取り除いてくれるようです。
     さて、高血圧や糖尿病のように、ある程度食生活や運動を心がければこのゴミがたまりにくくなるだけなのか、それとも遺伝子レベルで認知症という病態が今後解明されていくのか興味のあるところだね、と家族で話していました。今現在分かっていることは、アミロイドβというゴミは年齢が行けば行くほど溜まっていくものなので、アルツハイマー病はある意味、人間が長生きするようになったために現れた病気ともいえます。
     「老化」は多かれ少なかれ、必ず誰しもが経験する現象です。女性のからだでいえば、一番老化に影響するのは卵巣です。見た目が実年齢よりも若い人が世の中にいて美魔女などと言われたりしていますが、残念ながらどのくらい卵巣が老化しているかは、その人の見た目には表れません。よく巷で、「卵巣が若返って妊娠する方法」としていろいろなものを目にしますが、産婦人科医の誰に聞いても「どんなに頑張っても実年齢以上に卵巣が若返る方法はない!」というのが事実だということを知っておいてください。
     卵巣が老化することを他の言葉に言い換えれば、卵巣の中に受精できる能力のある卵子がどのくらい残っているか、です。その能力のある活きのいい卵子がなくなれば、女性は閉経を迎えるわけです。ここで女性の卵巣の中にどの位もともと卵子があるのか、それがどう減っていくのかをちょっとお話します。
     赤ちゃんとしてお母さんのおなかの中にいたころに、女性は卵子を卵巣の中に蓄えます。その数、妊娠20週頃に約700万個。しかし生まれる頃には1分の1の200万個ほどになります。生まれた後も初潮が来るまでに自然と消失し、思春期の頃には20~30万個にまで減少します。その後も、毎日20~30個が自然に消えていくほか、月経のたびに約1000個の卵子が減っていきます。その結果、初潮から300回くらい月経を繰り返している35歳ごろには2~3万個、つまり生まれた時の1~2%になってしまいます。
     いつか子どもがほしいと思っているけれど、経済的にとか仕事が忙しいからとか、いろいろな理由でまだまだと思っているうちに、どんどん卵巣の中の卵子は泡のように消えていってしまっているのです。
     でも40歳を超えても妊娠する人はいるじゃないか、と思う人もいるでしょう。そのようなケースは珍しいと思った方が良いです。自分にも当てはまるはず、と思わないほうが良いでしょう。40歳になっても妊娠する、どころか最初に話した生活習慣病のように、若いうちから自分の身体を気づかって過ごせなければ、血管や内臓の老化だけでなく卵巣の、そしてその中の卵子の老化が進み、30代でも妊娠しにくい可能性が出てきます。
    必要以上に卵巣や卵子の老化を自ら進めてしまわないように、今からできること、知っておきましょう。今からでも老化を最小限にしたい人は、私の著書『結婚していない。けど、いつか子どもがほしい人が今できること』を読んでみてくださいね。
     自分の身体に関心と責任を持って、若い時から大事にすることをおすすめします! 本を読んで心配なことがあった時には是非いつでも御相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2023年10月7日号

  • プレ・コンセプション・ケア(妊娠前心身ケア)

    妊娠出産は一つの通過点、その後の人生を

    Vol 82

     この三連休、津南駅前の温泉宿・雪国さんに家族でお泊りに行きました。9月は夫と姉の二人の誕生日、いつもお世話になっている母への敬老感謝、そして私の本の出版記念、毎日頑張っている娘のご苦労さま会でした。源泉かけ流しの温泉でゆっくり足を延ばして頭から足の先まで温まり、お風呂上りに裏山の冷たい湧水をいただいてツルスベ肌に。骨まで柔らかい鯉こくに津南産のコシヒカリと漬物を頂いてお腹も大満足。一晩に2回もお産に呼ばれて出たり入ったりしたのに、よくしていただいて本当にありがとうございました。朝のお産に呼ばれて車窓から見た津南の川や山は美しく、ここに生まれて良かったと思いましたよ!
     さて、今回9月13日にダイヤモンド社より出版になった本のご紹介。『結婚していない。けど、いつか子どもが欲しい人が今できること』(税込1650円)と、長いタイトルですが、まさにその内容をズバリ知って欲しくてつけました。
     昨今「プレコンセプションケア」という言葉が良く聞かれるようになってきましたが、本の中でしつこく明記していないまでも、この本は「プレコンセプションケア」本です。プレコンセプションケアとは、これまでよ
    く使われてきた「ブライダルチェック」に似た言葉で、プレ=前、コンセプション=妊娠、という意味から分かるように「妊娠する前から自分(やパートナー)の心身面や生活を見直してケアしよう」という試みです。
     これを読んでくださっている皆さんは、自分の月経が他の人と違うのか同じなのか気にしたことはありますか? 普通だと思っている自分の月経に、妊娠を遠ざけてしまう病気からのメッセージが隠れているかもしれません。
     年齢がいけばいくほど妊娠しにくいと知っている人は多いと思いますが、それが本当のところ何歳から拍車がかかって、どうしてそんなことが起こるのかを知っていますか? 健康診断でBやC判定だけど、経過観察になっているような異常が実は妊娠してから大変なことになるということを知らずに、次回の健康診断までに何とかすればよいと延ばし延ばしにしていませんか?
     男性はいつまでも女性を妊娠させる能力があるし、年齢と精子の老化は関係ないと思っていませんか? 普段何気なくしていることが、実年齢以上に体を老化させて、卵子や精子の老化を引き起こしていると知っていますか? 海外の先進国では、今皆さんに質問したような内容は、10代のうちに性教育で教えてもらっている常識です。
     また、プレコンセプションケアには、妊娠出産育児は自分やパートナーの生活をどう変えていくのか変えられるのか、妊婦健診や出産のための費用はいくらかかるのか、金銭面や育児の支援はどうしていくのか、などをあらかじめ医療機関や行政や福祉などに相談することも含まれます。
     このケアは、ただ単に順調な妊娠出産をめざすだけではなく、妊娠出産は1つの通過点として、その後の人生を心身ともに健康で過ごすために行うケアなのです。
     だからこの本は、妊娠をめざしている年齢の人だけでなく、更年期を迎える年齢の人、思春期を迎えたお子さんをお持ちの人、男性にも読んでいただきたいと思っています。
     未来の自分やパートナーのために今からできることが満載です。ブックス平沢さんも置いてくださっているとのこと、ぜひ一度手に取ってみてください!! それでも解決しないことがあったら是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2023年9月23日号

  • 気分の変動・イライラ・気分が沈む…月経前症候群

    お母さんを守ることが我が子を守ること

    たかき医院・仲栄美子医師

     9月の第1土日は毎年、たかき医院のある土市地区は秋祭りです。今年は4年ぶりに神社境内で演芸大会が催されるなど、にぎやかなお祭りになりました。演芸大会の開始時間頃には神社境内は「ここは渋谷か?」と思うほどでびっくりしました。日中は、暑い中たくさんの子どもたちが顔を真っ赤にしながら、神輿を引っ張っている活気と笑顔に、元気をもらいました。子どもたちが嬉しそうにしている姿は良いですね。
     さて、今日は以前もお話したPMSとPMDDについて最新のお話。PMSは月経前症候群のことで、月経前3~10日間に出る様々な精神的(気分の変動、すぐイライラする、気分が沈むなど)あるいは身体的症状(下腹部が張る、疲労感、腰痛、頭痛、むくみ、乳房の張りなど)のことで、月経が来ると減弱あるいは消失するもの。PMDDは月経前不快気分障害のことで、PMSのうち精神症状が強い場合を指します。
     PMSもPMDDも外来でお手伝いしていることは主に薬物療法になるかと思いますが、サプリ、漢方治療、低用量ピル、抗うつ剤など多数ある中から、その人の訴えに合わせて処方しています。 
     実はこの二つは多種の要因が複雑にかかわっており、いまだにはっきりとした発症原因が分かっていないのです。そのため多数の治療薬物が存在しています。PMSはビタミンEやカルシウムの摂取が症状を和らげるとか、PMDDの強い人は夜勤回数の多い人やストレスを多く感じている人であるという報告も出ています。
     では最近、高校生などの若い人たちにPMSが増えてきているように感じますが、それはなぜなのでしょう。
     PMDDに関していうと、その症状に悩む人の多くが、幼少時に両親の離婚、父母の不仲、親がアルコール依存や精神疾患を患っている、いじめ、DV(身近な人からの暴力)、性的虐待、ネグレクト(育児放棄)などを体験しているというのです。虐待までいかないにしても、もしかしたら、毎月お母さんのPMSやPMDDによって子どもにつらく当たってしまうことが、将来その子どもに月経が来た時のPMSやPMDDを引き起こす可能性につながるかもしれません。
     お母さんが月経が来ることに対して、とてもつらい気持ちを持っていることが伝われば、子どもは自分の月経もつらいに違いない、と思い込んでしまうでしょう。子ども時代に笑って過ごせること、その笑顔を家族が、特にお母さんが守ってあげることが、女の子の月経が来てから先の40年を元気に過ごせることに繋がっていきます。
     40年は人生の半分、もしかしたら半分以上の長い期間です。この長い期間の大半を月経のために侵されるなんて、大変なことだと思いませんか?そしてお母さんたちがPMDDを強く感じるほどのストレスはどこにあって、それをどう助けてあげたらよいのでしょう。
    これを踏まえると、PMDDの治療には、今までにお話した薬物療法のほかにカウンセリングや生活指導も大事であるというのが分かっていただけるかと思います。
     PMSやPMDDにはトリプトファンやGABAやビタミンB6の多い食品が良いのではないかという話もあります。トリプトファンは鰹節・高野豆腐・大豆・きな粉、など、GABAを多く含む食品はトマト缶詰(ホール)・ジャガイモ・かぼちゃ・ブドウ、など、ビタミンB6はとうがらし・米・にんにく・バジルなどです。
     是非取り入れてみていただき、それでも自分では限界と思ったら、抱え込まずに早く相談してくださいね。

    2023年9月9日号