Category

妻有新聞掲載記事一覧

  • アゲハのレストラン

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     昆虫、特にチョウやハチがよく集まる花がある。畑の雑草でもっとも手ごわい相手であるヤプガラシ、抜いても抜いてもどこからか芽が出てきては他の植物にからみつく厄介者。
     そんな厄介者でもチョウやハチ類にとっては魅力的な花らしい。一度アゲハチョウに聞いてみたいほどだが、本当によくこの花に来る。スズメバチの仲間もよく集まってくるのでハチ類にはよほど好評の花なんだろうな−って。
     我々がこの花の匂いをかぐとかなりキつめの匂いがするが、昆虫にとってはとても抜群に美味しい匂いだと思われる。
     今年は南天とユキツバキにからむヤブガラシをそのままにしておいて観察してみたが、からみつかれる方はたいへんだろうなと思う。
     もちろんチョウばかりではなくハナカミキリの仲間も来ているしコガネムシの仲間も来る。
     みんなお揃いのレストランになっている。家の周りにそんな場所が一ヵ所あってもバチは当たらないだろう…。

    2024年9月7日号

  • 雪国メダカ育成、「楽しんでいます」

    『masushin.enjoy medaka』丸山剛三さん

    自宅繁殖場で80種余、イベント出店も

     「メダカ好きを増やしたい」。そんな思いでメ
    ダカ屋『masushin.en
    joy medaka』(マスシン・エンジョイ・メダカ)の2年前に看板を掲げた丸山剛三さん(48、十日町市田中)。自宅敷地の繁殖場で今は80種余の品種を育て、希望者に販売したり、イベント出店を行っている。「メダカ愛好家は全国にいます。来てくれた方や、イベントで会う方と話す機会が増え、趣味を通じ人との繋がりが広がっています。地元の方にもメダカを育てる楽しさを伝えたいですね」。きものまつりや生誕地まつりなど地元イベントに店を出し、メダカ愛好家を少しずつ増やしている。

    2024年9月7日号

  • 「1保育園化・1小学校化」と「公共施設は防災拠点」

     これから作る公共施設は「全て防災拠点」、過言ではないだろう。学校や保育園の増改築、地域公民館や集会施設の更新、さらに役所の改修など、その全てが「防災・減災」を重点的に取り入れた公共施設が求められる。それは時代の要請と共に、まさに「住民の生命を守る拠点」だからだ。
     9月議会が十日町市、津南町、栄村で始まっている。関心の一つは津南町が方向性を示した小学校再編統合による町立小学校1校化、さらに保育園統合による1園化。その校舎や園舎の増改築における防災拠点化の取り組みだ。
     少子化による複式学級など、小学校の教育環境の改善に伴う学びの場・校舎の改築は、その目的の教育環境整備と共に公共施設のあり方も行政課題として併存する。それが「防災拠点化」。施設の改増築では当然、防災備品などの充実に取り組むだろうが、ことは備品の充実程度ではどうしようもない。 
     その公共施設の必然性、その場所の有効性、その施設が持つ機能と防災効果、さらに可動性など検討が必要だ。それは地震や風水害など災害発生時、どう機動力が発揮でき、住民の拠り所になれるのかなど多角的な視点、広い機能効果を考えた防災拠点が求められる。現役所庁舎と同等に併用できる施設が求められる。それが「これから作る公共施設の防災拠点化」である。
     津南町は、小学校の再編統合を『中央部の津南小、長野県境の上郷小、赤沢台地の芦ヶ崎小の3校統合』により新たな町立小学校を現津南小学校に誕生させる方針だ。保育園も同様。ならば全面改築を含む津南町唯一の小学校・保育園の改築場所、公共施設としての防災拠点化を考えるべきだ。保育園・小学校とも理念は吸収統合ではないはずで、新設の公共施設である。
     人口減少が進む津南町。今後新たな公共施設建設は少ないだろう。これは、十日町市の先行モデルにもなる。

    2024年9月7日号

  • 「キツさ」が魅力、全国850人駆ける

    第17回ツールド妻有

    中里中学生も初ボランティア参加

     〇…北は岩手、西は岡山から10~70代の男女850人余が妻有路を駆けた。「走る大地の芸術祭」といわれ、河岸段丘地形や中山間地を走るため獲得標高2千㍍余の傾斜のあるキツいコースが好評の「第17回ツールド妻有」は25日、ミオンなかさとを発着点に開催。おそろいの黄色いジャージを身に付けた選手たちが面積約760㌔平方㍍の妻有地域を巡る自転車大会。

    2024年8月31日号

  • 「棚田」学ぶ、高校生交流も

    探究学習10年間プロジェクト始動

    早稲田大学 高等学院

     農林水産省「繋ぐ棚田遺産」に、全国最多14地区の棚田が認定を受ける十日町市。谷あいの傾斜地に広がる棚田は観光人気はあるが、耕作放棄地が増えているのが現実。この「棚田」を探究学習素材に、松代地域と40年余の交流がある早稲田大学系列の早稲田大学高等学院の「棚田フィールドワーク」が始動。今月26~28日は、松苧ドーミトリィ(木戸一之代表)を拠点に現地学習。10年間継続プロジェクトで、地元松代高校生との交流も実施。都市部と中山間地の高校生交流は継続し行う。都市と里山の若者を巻き込む、新たな棚田交流に関心が集まっている。

    2024年8月31日号

  • 光から音へ「感じるアート」

    ウォルフガング・ギルさん(1983年生まれ)

     生まれた街は、いつもアートで彩られていた。南米北部ベネズエラの首都カラカス生まれ。原体験の延長に今がある。光で空間をアート展開し、光から音へと進化し、「感じる」アートに取り組むウォルフガング・ギルさん(40)。
     先週の金曜23日、昨年8月から暮らす十日町市下条に『ホンク・ツイート美術館』と『カフェ』を開いた。『音楽彫刻家』と名刺にあるギルさん。ニューヨークから知人を頼り家族3人で移り住んだ。
     「自然とアートが共存している素晴らしい妻有に、すぐに恋に落ち、移住を決めた」。

     カラカスのメトロポリタン大学でシステム工学学士号を取得し、銀行に就職したが6ヵ月で退職。「エンジニアの業務や計算は好きだったが、オフィスの環境が合わなかった」。生まれ育った
    アート環境が、自分の中で動き出すのを感じた。
     光の直進性、その屈折や色の錯綜感に魅かれた。「数学的、理学的で光と色を計算し、アート表現しているカルロス・クルス=ディエスに魅かれ、自分と同じ価値観を感じた」。自宅ガレージで光によるアート実験を重ねながら、この道への思いを強くした。友人から「アーティストになるならニューヨークに行ったほうがいい」と勧められ、25歳で渡米。「家族には語学学校に行って戻ってくると言って、そのまま美術大学院に入ったんだ」。
     この語学学校で運命的な出会い。2008年、学生だった愛里さんと会う。「出会ってすぐ魅かれ合い、2週間後には学校の寮で一緒に暮らし、今に至ります」。「私はやりたいことが多くあり、愛里はいつも側で応援してくれている。愛里は家族であり、友人であり、パートナーであり、そして最大の協力者だよ」。
     ニューヨーク・ブルックリン大学院を卒業後、アートの関心は『音・サウンド』に向かう。「音はそもそも周波数で表され、周波数が高いほど高音に、低いほど低音になるなど数学と深く関わっている」。
     だが、「音は目に見えず、理解してくれる人は少なかった」。問題解決のため『音の形』を追い求め、視覚化に取り組んだ分野が音響彫刻。「音は目に見えなくても空間を満たし、彩を与えたり、分割したり、さまざまな姿を見せてくれるが、金属やガラス、プラスチックなど変容性のある素材を使って作った彫刻を振動させることで、さらに音の変化を楽しむことができ、場所や空間自体を作品にできる」。

     日本へ、妻有へ向かう転機は、愛里さんの妊娠だった。「仕事も安定してきたので、出産のため一緒に日本に一時帰国したんだ。その時、知人に大地の芸術祭を教えてもらって」。昨年2月、妻有初訪問。「ここ妻有の地に、すぐに恋に落ち、移住を決めたよ」。
     今月23日開設の『ホンク・ツイート美術館』。ホンクは車のクラクション、ツイートは鳥のさえずり音を意識し名付けた。「私はニューヨークのコーヒーも好きで、どうしてもそれが飲みたくて、オーストラリアからイタリア製のエスプレッソ・マシンを購入してきた。税関で止められた時はひやひやしたね。ここで、おいしいコーヒーを飲みながらアートや窓から見える自然を楽しんで欲しいね」。
     ギルさんの思いはさらに広がる。「美術館を拠点に、多くの人が集まる場になって欲しい。アー
    トを楽しむバーや音楽を楽しむクラブなどもしたい」、「何かを表現したい人の教育の場も作りたいし、山の中に倉庫を借りてアートスペースをもっと作りたい」と話す。
     さらに、「アートをめざしてきたが、エンジニア大学で学んだ方法論が今も生きている。方法論があるおかげで夢だけで終わらず、叶えるための行動や方向性を導き出している。すべて繋がっているよ。面白い」。

    ▼バトンタッチします。
     春日彩音さん
        
     『ホンク・ツイート美術館』=水曜~日曜午前8時~午後5時開館。十日町市下条4丁目489番地1。今後バー経営も検討している。インスタグラム@thehonktweetcafe

    2024年8月31日号

  • コクる、レベチも、セカチューも、マグルも知らない

    世代間ギャップ、どうするジジババ

    長谷川 好文 (秋山郷山房もっきりや)

     昔になるが、山口県の友人と広島県尾道で落ち合い瀬戸内海に浮かぶ小さな島を訪ねた。その時、尾道で居酒屋に入って久しぶりに思い出話に花を咲かせていた。
     酔った勢いで若いアルバイトのお姉さんに「あの、寅次郎って知ってる」と余計なことを聞いた事があった。思えば失礼な話だが、お姉さんは「しらない」と答えた。おどろいて「男はつらいよのフーテンの寅だよ」と聞き直したが、やはり知らないという。
     少しおどろいた。今時の人は常識がないなと感じながらホテルに帰った。いま思うとあれは知っていても答えるのが面倒で知らない人と関わりたくないと云うことだと気がつくのだが、ジジババが入った今の私は逆に若い人の常識的な知識がまったくわからない。
     飲み屋に座って隣から聞こえてくる(レベチもコクるもセカチューもマグルも)分からない。オタクというのは分かるが、そこから進化した新しい言葉が分からない。オタクという人たちが話す漫画の名前も鉄腕アトムやウルトラマンあたりまでは分かるが、逆に「おじいさん レベチって分かる」と聞かれたら答えようがない。
     事ほどさように時代の変化を実感することになる。「勉強してなかったからな〜」。
     もっとも私の若かった時、夢中になって覚えたこむずかしい知識などは、今の多くの人にとっては関心がなく、急速に進む時代に取り残されているのは、ジジババが入った私だったのかと感じてしまった。
     夢中になって競争するように覚え読んだのだがそれら作家の名前や作品、映像の記憶や美術館で見た絵画などは、今の人達にとってはどうでもよいことで、それを大切に知識や常識だと思っている私がすでに無知識、非常識なのだと感じるようになった。
     パソコンやスマホの知識だって、今時の小学生より劣っている。こうして時代は進んで行き、ページがめくられて高齢者たちは別人格としてくくられていくのだろう。
     もっとも時代が進んで若者に私と同じようなジジババが入ってくるときに、ページがめくられて終わった人たちとして、ひとかたまりにくくられて行く。
     世代間のギャップは常時更新されて行くのは当たり前のことで、そうなると今のジジババたちは旧世代人として、より古いものを抱え込んでいくしかないのだろう。
     面白いもので私の親の世代も自動車が身近になっておどろき、各家庭に電話がひけておどろき、パソコンの出現におどろきしたのだ。
     ただ残念なのはノーベル文学賞の川端康成も大江健三郎も知識として残るだけで、文体もその生き方も記憶の外にはみ出して行ってしまうことだ。
     おもえばずいぶんと呑気な時代を過ごさせてもらった。私としてはコクる、レベチ、セカチューも知らない世代の中に耽溺して平和な時代が続くことを願いつつ、死神が脇に立って「お前の番だよ」と告げられて、最後の時を迎えた方がストレスがなくて十分幸せということだと思い至った。 池波正太郎やつげ義春や海音寺潮五郎の小説本を引っ張り出して、老眼鏡を杖に、その時まで酒もタバコも再開して生きてやるしかないだろう。
     ときに「コクる」は告白することだって!

    2024年8月31日号

  • 常緑のスゲ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     苗場山麓で見られる常緑のスゲは、ホソバカンスゲ、ヒメカンスゲ、ヒロバスゲなど7種ほどある。
     花期は春から初夏にかけてで、どれもよく似た地味な花を咲かせる。葉は線形で、幅に違いはあるものの見分けるのが面倒くさい。
     こんな厄介なスゲの中からそれぞれの特性を見極め、暮らしに取り入れられてきたものがある。
     ミヤマカンスゲ(ヒロロ、写真左)の葉は軽くて丈夫、水をはじく性質から、雪や雨時の雨具であるミノの材料とした。採取時期は新葉が程よく成長した8月から秋の彼岸ころとされた。この地域ではよく見かけ、沢沿いなどの少し湿った所で群生していることが多い。
     コシノホンモンジスゲ(タツノケ、写真右)の葉も水に強い性質から、旦那衆の雨具であるケミノの材料となった。採取時期は7月下旬から8月上旬である。日当たりのいい雑木林の斜面などで見かける。
     自然と向き合ってきた先人の見識からは学ぶべき事ばかりだ。

    2024年8月31日号

  • 俳句が豊かな人生の一助に

    小川信子さん、今も長岡に勉強通い

     好きな句がある。いま勉強のために月1回通っている長岡市・安浄寺の安原葉住職の句。
     比叡に向き修す一人の西虚子忌
     妻有俳壇の選者・小川信子さん(78、雅号のぶこ)。「安原先生は句集を出していて胸を打つ作品がいっぱいあります。この句は高浜虚子の句に自分の歩むべき道を諭された句だと聞いています。なるほどと思います」。

    2024年8月31日号

  • 月額34万円と月額12万9千円

     十日町市議会と栄村議会で議員報酬を模索する動きが同時進行している。人口4万7470人(1万9423世帯)の市、1584人(782世帯)の村では「比較にならない」、そんな声が聞こえる。十日町市の議員報酬月額30万円、栄村議員12万9千円。「数字の比較は無理がある」、当然の声が聞こえる。
     だが、議員活動はその自治体の大小、人口の多少に関係なく「議会・議員の活動」。報酬は「議員活動の質」が問われる。極論と言われるが、市町村議員の報酬を規定する根拠は極めて不明瞭であり、換言すれば「報酬額は自由裁量」となる。
     十日町市の議会改革特別委員会は、来年4月改選の議員報酬を現額4万円アップの月額34万円に改定する方針を固めた。その根拠理由にあげているのが「29年間据え置いている」「市行政課長級を基準」など報酬引上げの理由を列挙している。
     この理由を考えたい。据え置き29年間は、その時々の市議の判断であり、長期間の据え置きは引上げ理由にならない。課長級という。市行政職員の課長職に就くまでの苦節の歳月と、市議の在任期間はどう考えても同列に論じられない。議員報酬の引き上げが必要と、時の議会・議員が判断するなら、堂々と議員提案で本会議審議し、採決すればよい、それだけの事だ。
     長野県最下位の議員報酬の栄村議会。人口は十日町市の3%余。同列に論じるのは無謀、と大声が聞こえるが、議員活動は同じ。そこに暮らす住民と向き合う議員活動そのものは同列。責務、住民付託は同じ重さを持つ。市議会と村議会、同じ議会だ。いや、より身近な活動を求められる村議会、住民との距離感は相当近い。当然、議員活動は幅広く、深く、住民要望は公私にわたる。
     その命題、「議員報酬とは」。ますます疑問符が膨らむ。

    2024年8月31日号

  • アゲハのレストラン

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     昆虫、特にチョウやハチがよく集まる花がある。畑の雑草でもっとも手ごわい相手であるヤプガラシ、抜いても抜いてもどこからか芽が出てきては他の植物にからみつく厄介者。
     そんな厄介者でもチョウやハチ類にとっては魅力的な花らしい。一度アゲハチョウに聞いてみたいほどだが、本当によくこの花に来る。スズメバチの仲間もよく集まってくるのでハチ類にはよほど好評の花なんだろうな−って。
     我々がこの花の匂いをかぐとかなりキつめの匂いがするが、昆虫にとってはとても抜群に美味しい匂いだと思われる。
     今年は南天とユキツバキにからむヤブガラシをそのままにしておいて観察してみたが、からみつかれる方はたいへんだろうなと思う。
     もちろんチョウばかりではなくハナカミキリの仲間も来ているしコガネムシの仲間も来る。
     みんなお揃いのレストランになっている。家の周りにそんな場所が一ヵ所あってもバチは当たらないだろう…。

    2024年9月7日号

  • 雪国メダカ育成、「楽しんでいます」

    『masushin.enjoy medaka』丸山剛三さん

    自宅繁殖場で80種余、イベント出店も

     「メダカ好きを増やしたい」。そんな思いでメ
    ダカ屋『masushin.en
    joy medaka』(マスシン・エンジョイ・メダカ)の2年前に看板を掲げた丸山剛三さん(48、十日町市田中)。自宅敷地の繁殖場で今は80種余の品種を育て、希望者に販売したり、イベント出店を行っている。「メダカ愛好家は全国にいます。来てくれた方や、イベントで会う方と話す機会が増え、趣味を通じ人との繋がりが広がっています。地元の方にもメダカを育てる楽しさを伝えたいですね」。きものまつりや生誕地まつりなど地元イベントに店を出し、メダカ愛好家を少しずつ増やしている。

    2024年9月7日号

  • 「1保育園化・1小学校化」と「公共施設は防災拠点」

     これから作る公共施設は「全て防災拠点」、過言ではないだろう。学校や保育園の増改築、地域公民館や集会施設の更新、さらに役所の改修など、その全てが「防災・減災」を重点的に取り入れた公共施設が求められる。それは時代の要請と共に、まさに「住民の生命を守る拠点」だからだ。
     9月議会が十日町市、津南町、栄村で始まっている。関心の一つは津南町が方向性を示した小学校再編統合による町立小学校1校化、さらに保育園統合による1園化。その校舎や園舎の増改築における防災拠点化の取り組みだ。
     少子化による複式学級など、小学校の教育環境の改善に伴う学びの場・校舎の改築は、その目的の教育環境整備と共に公共施設のあり方も行政課題として併存する。それが「防災拠点化」。施設の改増築では当然、防災備品などの充実に取り組むだろうが、ことは備品の充実程度ではどうしようもない。 
     その公共施設の必然性、その場所の有効性、その施設が持つ機能と防災効果、さらに可動性など検討が必要だ。それは地震や風水害など災害発生時、どう機動力が発揮でき、住民の拠り所になれるのかなど多角的な視点、広い機能効果を考えた防災拠点が求められる。現役所庁舎と同等に併用できる施設が求められる。それが「これから作る公共施設の防災拠点化」である。
     津南町は、小学校の再編統合を『中央部の津南小、長野県境の上郷小、赤沢台地の芦ヶ崎小の3校統合』により新たな町立小学校を現津南小学校に誕生させる方針だ。保育園も同様。ならば全面改築を含む津南町唯一の小学校・保育園の改築場所、公共施設としての防災拠点化を考えるべきだ。保育園・小学校とも理念は吸収統合ではないはずで、新設の公共施設である。
     人口減少が進む津南町。今後新たな公共施設建設は少ないだろう。これは、十日町市の先行モデルにもなる。

    2024年9月7日号

  • 「キツさ」が魅力、全国850人駆ける

    第17回ツールド妻有

    中里中学生も初ボランティア参加

     〇…北は岩手、西は岡山から10~70代の男女850人余が妻有路を駆けた。「走る大地の芸術祭」といわれ、河岸段丘地形や中山間地を走るため獲得標高2千㍍余の傾斜のあるキツいコースが好評の「第17回ツールド妻有」は25日、ミオンなかさとを発着点に開催。おそろいの黄色いジャージを身に付けた選手たちが面積約760㌔平方㍍の妻有地域を巡る自転車大会。

    2024年8月31日号

  • 「棚田」学ぶ、高校生交流も

    探究学習10年間プロジェクト始動

    早稲田大学 高等学院

     農林水産省「繋ぐ棚田遺産」に、全国最多14地区の棚田が認定を受ける十日町市。谷あいの傾斜地に広がる棚田は観光人気はあるが、耕作放棄地が増えているのが現実。この「棚田」を探究学習素材に、松代地域と40年余の交流がある早稲田大学系列の早稲田大学高等学院の「棚田フィールドワーク」が始動。今月26~28日は、松苧ドーミトリィ(木戸一之代表)を拠点に現地学習。10年間継続プロジェクトで、地元松代高校生との交流も実施。都市部と中山間地の高校生交流は継続し行う。都市と里山の若者を巻き込む、新たな棚田交流に関心が集まっている。

    2024年8月31日号

  • 光から音へ「感じるアート」

    ウォルフガング・ギルさん(1983年生まれ)

     生まれた街は、いつもアートで彩られていた。南米北部ベネズエラの首都カラカス生まれ。原体験の延長に今がある。光で空間をアート展開し、光から音へと進化し、「感じる」アートに取り組むウォルフガング・ギルさん(40)。
     先週の金曜23日、昨年8月から暮らす十日町市下条に『ホンク・ツイート美術館』と『カフェ』を開いた。『音楽彫刻家』と名刺にあるギルさん。ニューヨークから知人を頼り家族3人で移り住んだ。
     「自然とアートが共存している素晴らしい妻有に、すぐに恋に落ち、移住を決めた」。

     カラカスのメトロポリタン大学でシステム工学学士号を取得し、銀行に就職したが6ヵ月で退職。「エンジニアの業務や計算は好きだったが、オフィスの環境が合わなかった」。生まれ育った
    アート環境が、自分の中で動き出すのを感じた。
     光の直進性、その屈折や色の錯綜感に魅かれた。「数学的、理学的で光と色を計算し、アート表現しているカルロス・クルス=ディエスに魅かれ、自分と同じ価値観を感じた」。自宅ガレージで光によるアート実験を重ねながら、この道への思いを強くした。友人から「アーティストになるならニューヨークに行ったほうがいい」と勧められ、25歳で渡米。「家族には語学学校に行って戻ってくると言って、そのまま美術大学院に入ったんだ」。
     この語学学校で運命的な出会い。2008年、学生だった愛里さんと会う。「出会ってすぐ魅かれ合い、2週間後には学校の寮で一緒に暮らし、今に至ります」。「私はやりたいことが多くあり、愛里はいつも側で応援してくれている。愛里は家族であり、友人であり、パートナーであり、そして最大の協力者だよ」。
     ニューヨーク・ブルックリン大学院を卒業後、アートの関心は『音・サウンド』に向かう。「音はそもそも周波数で表され、周波数が高いほど高音に、低いほど低音になるなど数学と深く関わっている」。
     だが、「音は目に見えず、理解してくれる人は少なかった」。問題解決のため『音の形』を追い求め、視覚化に取り組んだ分野が音響彫刻。「音は目に見えなくても空間を満たし、彩を与えたり、分割したり、さまざまな姿を見せてくれるが、金属やガラス、プラスチックなど変容性のある素材を使って作った彫刻を振動させることで、さらに音の変化を楽しむことができ、場所や空間自体を作品にできる」。

     日本へ、妻有へ向かう転機は、愛里さんの妊娠だった。「仕事も安定してきたので、出産のため一緒に日本に一時帰国したんだ。その時、知人に大地の芸術祭を教えてもらって」。昨年2月、妻有初訪問。「ここ妻有の地に、すぐに恋に落ち、移住を決めたよ」。
     今月23日開設の『ホンク・ツイート美術館』。ホンクは車のクラクション、ツイートは鳥のさえずり音を意識し名付けた。「私はニューヨークのコーヒーも好きで、どうしてもそれが飲みたくて、オーストラリアからイタリア製のエスプレッソ・マシンを購入してきた。税関で止められた時はひやひやしたね。ここで、おいしいコーヒーを飲みながらアートや窓から見える自然を楽しんで欲しいね」。
     ギルさんの思いはさらに広がる。「美術館を拠点に、多くの人が集まる場になって欲しい。アー
    トを楽しむバーや音楽を楽しむクラブなどもしたい」、「何かを表現したい人の教育の場も作りたいし、山の中に倉庫を借りてアートスペースをもっと作りたい」と話す。
     さらに、「アートをめざしてきたが、エンジニア大学で学んだ方法論が今も生きている。方法論があるおかげで夢だけで終わらず、叶えるための行動や方向性を導き出している。すべて繋がっているよ。面白い」。

    ▼バトンタッチします。
     春日彩音さん
        
     『ホンク・ツイート美術館』=水曜~日曜午前8時~午後5時開館。十日町市下条4丁目489番地1。今後バー経営も検討している。インスタグラム@thehonktweetcafe

    2024年8月31日号

  • コクる、レベチも、セカチューも、マグルも知らない

    世代間ギャップ、どうするジジババ

    長谷川 好文 (秋山郷山房もっきりや)

     昔になるが、山口県の友人と広島県尾道で落ち合い瀬戸内海に浮かぶ小さな島を訪ねた。その時、尾道で居酒屋に入って久しぶりに思い出話に花を咲かせていた。
     酔った勢いで若いアルバイトのお姉さんに「あの、寅次郎って知ってる」と余計なことを聞いた事があった。思えば失礼な話だが、お姉さんは「しらない」と答えた。おどろいて「男はつらいよのフーテンの寅だよ」と聞き直したが、やはり知らないという。
     少しおどろいた。今時の人は常識がないなと感じながらホテルに帰った。いま思うとあれは知っていても答えるのが面倒で知らない人と関わりたくないと云うことだと気がつくのだが、ジジババが入った今の私は逆に若い人の常識的な知識がまったくわからない。
     飲み屋に座って隣から聞こえてくる(レベチもコクるもセカチューもマグルも)分からない。オタクというのは分かるが、そこから進化した新しい言葉が分からない。オタクという人たちが話す漫画の名前も鉄腕アトムやウルトラマンあたりまでは分かるが、逆に「おじいさん レベチって分かる」と聞かれたら答えようがない。
     事ほどさように時代の変化を実感することになる。「勉強してなかったからな〜」。
     もっとも私の若かった時、夢中になって覚えたこむずかしい知識などは、今の多くの人にとっては関心がなく、急速に進む時代に取り残されているのは、ジジババが入った私だったのかと感じてしまった。
     夢中になって競争するように覚え読んだのだがそれら作家の名前や作品、映像の記憶や美術館で見た絵画などは、今の人達にとってはどうでもよいことで、それを大切に知識や常識だと思っている私がすでに無知識、非常識なのだと感じるようになった。
     パソコンやスマホの知識だって、今時の小学生より劣っている。こうして時代は進んで行き、ページがめくられて高齢者たちは別人格としてくくられていくのだろう。
     もっとも時代が進んで若者に私と同じようなジジババが入ってくるときに、ページがめくられて終わった人たちとして、ひとかたまりにくくられて行く。
     世代間のギャップは常時更新されて行くのは当たり前のことで、そうなると今のジジババたちは旧世代人として、より古いものを抱え込んでいくしかないのだろう。
     面白いもので私の親の世代も自動車が身近になっておどろき、各家庭に電話がひけておどろき、パソコンの出現におどろきしたのだ。
     ただ残念なのはノーベル文学賞の川端康成も大江健三郎も知識として残るだけで、文体もその生き方も記憶の外にはみ出して行ってしまうことだ。
     おもえばずいぶんと呑気な時代を過ごさせてもらった。私としてはコクる、レベチ、セカチューも知らない世代の中に耽溺して平和な時代が続くことを願いつつ、死神が脇に立って「お前の番だよ」と告げられて、最後の時を迎えた方がストレスがなくて十分幸せということだと思い至った。 池波正太郎やつげ義春や海音寺潮五郎の小説本を引っ張り出して、老眼鏡を杖に、その時まで酒もタバコも再開して生きてやるしかないだろう。
     ときに「コクる」は告白することだって!

    2024年8月31日号

  • 常緑のスゲ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     苗場山麓で見られる常緑のスゲは、ホソバカンスゲ、ヒメカンスゲ、ヒロバスゲなど7種ほどある。
     花期は春から初夏にかけてで、どれもよく似た地味な花を咲かせる。葉は線形で、幅に違いはあるものの見分けるのが面倒くさい。
     こんな厄介なスゲの中からそれぞれの特性を見極め、暮らしに取り入れられてきたものがある。
     ミヤマカンスゲ(ヒロロ、写真左)の葉は軽くて丈夫、水をはじく性質から、雪や雨時の雨具であるミノの材料とした。採取時期は新葉が程よく成長した8月から秋の彼岸ころとされた。この地域ではよく見かけ、沢沿いなどの少し湿った所で群生していることが多い。
     コシノホンモンジスゲ(タツノケ、写真右)の葉も水に強い性質から、旦那衆の雨具であるケミノの材料となった。採取時期は7月下旬から8月上旬である。日当たりのいい雑木林の斜面などで見かける。
     自然と向き合ってきた先人の見識からは学ぶべき事ばかりだ。

    2024年8月31日号

  • 俳句が豊かな人生の一助に

    小川信子さん、今も長岡に勉強通い

     好きな句がある。いま勉強のために月1回通っている長岡市・安浄寺の安原葉住職の句。
     比叡に向き修す一人の西虚子忌
     妻有俳壇の選者・小川信子さん(78、雅号のぶこ)。「安原先生は句集を出していて胸を打つ作品がいっぱいあります。この句は高浜虚子の句に自分の歩むべき道を諭された句だと聞いています。なるほどと思います」。

    2024年8月31日号

  • 月額34万円と月額12万9千円

     十日町市議会と栄村議会で議員報酬を模索する動きが同時進行している。人口4万7470人(1万9423世帯)の市、1584人(782世帯)の村では「比較にならない」、そんな声が聞こえる。十日町市の議員報酬月額30万円、栄村議員12万9千円。「数字の比較は無理がある」、当然の声が聞こえる。
     だが、議員活動はその自治体の大小、人口の多少に関係なく「議会・議員の活動」。報酬は「議員活動の質」が問われる。極論と言われるが、市町村議員の報酬を規定する根拠は極めて不明瞭であり、換言すれば「報酬額は自由裁量」となる。
     十日町市の議会改革特別委員会は、来年4月改選の議員報酬を現額4万円アップの月額34万円に改定する方針を固めた。その根拠理由にあげているのが「29年間据え置いている」「市行政課長級を基準」など報酬引上げの理由を列挙している。
     この理由を考えたい。据え置き29年間は、その時々の市議の判断であり、長期間の据え置きは引上げ理由にならない。課長級という。市行政職員の課長職に就くまでの苦節の歳月と、市議の在任期間はどう考えても同列に論じられない。議員報酬の引き上げが必要と、時の議会・議員が判断するなら、堂々と議員提案で本会議審議し、採決すればよい、それだけの事だ。
     長野県最下位の議員報酬の栄村議会。人口は十日町市の3%余。同列に論じるのは無謀、と大声が聞こえるが、議員活動は同じ。そこに暮らす住民と向き合う議員活動そのものは同列。責務、住民付託は同じ重さを持つ。市議会と村議会、同じ議会だ。いや、より身近な活動を求められる村議会、住民との距離感は相当近い。当然、議員活動は幅広く、深く、住民要望は公私にわたる。
     その命題、「議員報酬とは」。ますます疑問符が膨らむ。

    2024年8月31日号