『街の日常にもっときものを』

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河田 千穂さん(1993年生まれ)

 桜が満開になる4月中旬過ぎに、街をきもので歩くイベントを企画している。「以前、ネットを通じてアンケートをしました。きものについて一番困っていることのトップは、きものを着る機会、場がないという回答でした。きものが好きな方が多い街ですから、もったいないですね」。
 このきものは知人から譲り受けた「小紋」。幼少期から絵を描くことが好きで、大学では服飾関係のテキスタイル・デザインを専攻。「そのままデザイン系に進むと自分では思っていましたが、『るろうに剣心』との出会いで、和の世界観、きものへの関心が増し、思いはさらに増しています」。
 学生時代に刺激を受け、「推し」バンドになった『デッド・オア・アライヴ』のボーカルの世界観に魅かれ、「追っかけでロンドンを何往復もしました」。大学卒後の進路は「路線変更」。すぐに就職せず、都内の料亭でバイトし、推しバンドのライブ日程に合わせロンドンへ。渡り鳥生活を1年余り続ける。「ロンドンでは、日本文化を通じて和の雰囲気をさらに感じ、きものを着ていると、きものを『作品』と見てくれます。これだ、と思いました」。
 きもの関連企業をリサーチし、十日町市の「きものブレイン」でテキスタイルデザイナーとして入社。在社中に地元の十日町服飾専門学校に通い、実務3年以上で受験できる「着付け師」資格を取得。同じ会社でパートナーと出会い退社。きものレンタル『kcda』(クダ)を立ち上げ、成人式の前撮りやきものイベントで着付を担当している。kcdaはKawadaChihoを入れ替えアレンジした。
 好きな「絞り」や「小
紋」「訪問着」「振袖」など100着ほど持つ。専用クローゼットに三つ折りでハンガーに吊るし保管している。
 「飲み会も多いので、そういう時は周りに気を使わせないようにポリエステルのきもので行きます。タイムスリップできれば、るろうに剣心の時代に行きたいですね」。聖地巡礼で会津若松を何度も訪れている。
 絵も好きで、昨年の十日町きものまつりでは路上ライブ・ペイントを行い、出没で話題になった熊を自分のイメージで描いた。「なかなか描いている時間がないですね」。
 「私は歴史が好きで、バックグラウンドがあるものに魅かれます。歴史と伝統があるきものです。雪まつり、きものまつり、もっとファッションショーに力を入れてもいいのでは。きものを身近なものにしていきたいですね。街なかで日常的にきもの姿が見られれば、もっとすてきな雰囲気の街になるのではないでしょうか」。
◆バトンタッチします。
 「廣田伸子さん」

続きは本誌2024年3月30日号を御覧ください