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妻有新聞掲載記事一覧

  • 「ご近所付き合いの大切さ」力説

    「激震お見舞い」を考える

    松崎 房子 (元ゆずり葉編集委員)

     能登大地震から程なく四ヵ月になろうとした頃、やっと電話がかけられた。
     元日に起きた能登地震、わが長男の嫁さんの実家も小松市にあって、大騒ぎになった。彼女を通じて小松の皆様は、とりあえずはご無事である事はすぐわかった。
     もう一人案じた人が居た。十日町在住の昔から親交のあった知人が能登七尾市にお住まいだ。携帯番号は知らない。TVに映し出される様子は、目を覆うばかり。電話すべきではない状況と判断し、しばらく経ってからと思った。一向に状況は良くならない。もし電話が通じても、どう話したらよいのか? どんな状況なのか? とても聞けそうもない。折に触れてのカンパをする位しか出来なかった。
     後ろめたさにつぶされそうになりながら、時だけは容赦なく過ぎた。三月末、恐る恐る電話した。それでも明るい元気そうな声で奥様が出て下さった。ご主人は農業をなさっているので、夜七時半位だったが既に床に就かれたとか。
     奥様は少し興奮気味で、状況を少しずつ話して下さった。避難所から帰宅したばかり。未だ家は壊れたままの所もあり、不自由な事ばかりだとか。近所で助け合ってなんとか暮らしています。ご近所の有難さを実感しています。とおっしゃった。
     電話を切って、ほっとする部分があり、結局は自分の気休めである事に気が付き、また後ろめたさに責められている。
     阪神淡路の時は友人知人が大勢いるので本当に心配した。メディアは盛んに〈不要不急の電話は掛けるな〉と声を大にする。が、絶対必要なのだからと言い訳しつつ、かけまくった。全く繋がらない。
     次は中越地震。十日町にも友人知人ばかり、電話を掛けまくったがやはりダメ。ある瞬間、繋がった。あまりに寒いので防寒具を取りに来たところよ、みんな無事だから安心してと言われた。その次は熊本地震。娘婿さんの実家。娘夫婦を通じて皆さんの無事を知る事ができホッとした。
     阪神淡路大震災の後、ボランティア元年と言われ、いろんな事が少しずつ定義づけられるようになった。ボランティア活動はわが身の事は全部我が身で処し、被災者に迷惑をかけない事を大前提とする。年を重ねた今となっては、お見舞いに行く事も差し控えねばならない。
     全国あちこちで地震が起き、無事・安全な地域はないみたい。いつ我が身に降りかかるかもしれない。七尾の奥様はご近所付き合いの大切さを力説。千葉も揺れているみたいだから気を付けてね、と反対に注意された。現在の当地は、ご近所付き合いが希薄。大問題だ。

    2024年4月6日号

  • 軌道と灌漑水路

    小林 幸一(津南案内人)

     津南町自然に親しむ会のスノーシ
    ュートレッキングで穴藤の鉄橋跡を見た際に、対岸にも石垣のような遺構が残っているので調査しようにも川は渡れず、周囲は崖に囲まれているので、翌週に見玉の石落としの方から向かってみました。
     法務局の地図ビューアーでは百年前と思われる山道が登記されているので、残雪の中に旧道を探し、荒れ果てた山道を川原まで降りると灌漑水路跡や軌道跡がハッキリと残っていました。
     中津川電源開発では新潟県知事から水利使用の許可が下りた際に、正面ヶ原への旧用水への補給が義務付けられていましたが、工事軌道と合わせて工事をしたために8カ所の隧道の管理上の問題や、中津川に近いことから大水で何度も流されました。
     他にも水門の開閉権が電力会社側にあったことから十分な用水は得られず幾度も水不足になりました。(津南町史より)
     今までの
    写真エッセイの中から中津川発電所工事をまとめたレポートが「津南学vol.12」の中に掲載して頂きました。「秋山郷の電源開発―百年後の出逢い」と題した33ページに及ぶ集大成ですので興味のある方はご覧ください。

    2024年4月6日号

  • 小さな集落の古民家パン屋さん

    津南町鹿渡新田「ヤナギヤ」

    国産小麦と旬食材、金谷夫妻11日オープン

     築120年余の古民家にパン屋さんがオープンする。津南町と十日町市の境にある、12世帯が暮らす津南町鹿渡新田。その一角にパンとお菓子の店『ヤナギヤ』が今月11日オープンする。店主の金谷日向さん(34)は「この地域の皆さんにとってのちょっとしたお出かけ先のひとつになりたいですね。地域の元気や楽しみに繋がる場所になれれば」と笑顔をみせる。日向さんがパンやお菓子を作り、夫の恭平さん(31)がサポート。小さな集落に生まれるパン屋さんの取り組みが関心を呼んでいる。

    2024年4月6日号

  • 危うい、地方自治法改正

     またも「その他」の危うさが表出している。国と地方の関係を『対等』と法で規定する地方自治法。その改正案が今国会に提案された。改正案の中で『指示権』を拡大し、国の裁量を広げる余地を作った。それが『その他』。改正案では国が指示権を発動できる場面として「大規模な災害」「感染症の蔓延」「その他」とする。この「その他」は『国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、または発生する恐れがある場合』と、字面は一般的な表現だが、それは逆に「国・政府の解釈による裁量部分が広がり『思いのまま』の指示権」となる怖れがある。相当なる危うさが秘められている。
     なぜ国・政府は地方自治法の改正に踏み切るのか。その説明では新型コロナウイルス感染拡大の時の国と地方の関係性から見える教訓を上げる。新型コロナ禍で地方が国方針に異を唱えたことが、改正論議を進め、首相の諮問機関で政権の後押し機関でもある地制調・地方制度調査会が昨年12月、「必要な指示を行えるように」と答申し、今国会への改正案提出となった。
     一方的な指示権ではないにしろ、事前に地方自治体の意見を聞くなど「適切な対応に努めなければならない」との文言はあるが、適切な対応とは、ここもかなり危うい。『その他』の範囲は政府の裁量にあり、相当に広い解釈が可能になっている。
     この国の危うさは、憲法の解釈を都合良く「拡大解釈」や「独自解釈」により、有事法制や最近の武器輸出など、法治国家を逆手にとった政策がまかり通っている現実にあり、相当に危うい。
     今国会に提案の地方自治法改正、これまでの「対等」から「上下・主従」を含ませた改正案である点は、とても看過できない。国政策をゴリ押ししたマイナンバー、その登録率を地方交付税交付に反映など、指示権につながる危うさだ。地方の声上げの時だ。

    2024年4月6日号

  • 「早期開通を」、中京・関西圏繋ぐ

    トンネル貫通、供用開始3年後

    灰雨バイパス

     改良により地域の安心安全道路であり、中京圏や関西圏と妻有地域を繋ぐ物流・交流道としての期待が高まっている国道117号「灰雨バイパス(仮称)」(延長1180㍍、トンネル827㍍)。昨年11月にトンネルが貫通。さらなる整備促進が求められるなか、貫通式は27日に現地で実施。供用開始は3年後の2027年度(令和9年度)を見込んでいる。住民は「いまの灰雨スノーシェッドは狭い。安全に通行できるよう早くバイパス化してほしい」と早期開通に期待している。

    2024年3月30日号

  • 「まずは一歩」、広域連携で

    結婚支援「ハピ婚」に津南町も

     全国的に社会問題として深刻化している地方の人口減少。その要因に挙げられているのが『未婚者』の増加。十日町市は昨年、新たな婚活支援で小千谷市との広域連携に取り組み、婚活イベントや婚活支援センター登録者同士のマッチングで、合わせて11組が誕生するなど連携効果が出ている。新年度はさらに津南町が連携に加わることになり、十日町市の結婚支援センターは『越後妻有ハピ婚サポートセンター』に名称変更して取り組む。栄村でも十日町市や津南町で働く人は会員登録できることから、より広域的な効果が期待され、人口対策の決め手になるか関心が集まる。

    2024年3月30日号

  • 中学生の疑問、「なぜ結婚を…」「なぜ子を産むの…」

    You tube「ハダカベヤ」にゲスト出演

    vol 95

     実家の十日町市に戻ってきてから、母のやっていた講演会活動を引き継いで、かれこれ16年目に入ります。最近、中学校で性のお話講演会をさせていただくときに、この質問よく受けるなあというものがあります。それは、「必ず結婚しないとダメですか?」「子どもを産まないとダメですか?」です。
     先月2月27日に厚生労働省は人口動態統計の速報値を公表し、それによると2023年の出生数は過去最少の75万8631人(前年比マイナス1万116人)で、 婚姻件数も戦後初めて50万組を下回り、48万9281組となったとのこと。これは国立社会保障・人口問題研究所の推計より、およそ12年早いペースで少子化が進んでいるということなのだとか。16年前にちょうど「草食系男子」ということばが流行語大賞になりましたが、今の様子は草食系を通り越して「絶食系」に近いともいえます。
     性のお話講演会は全国的に、以前は怖がらせて安易な性行為はやめさせよう、といった傾向が強かったのですが、最近は少子化を少しでも解消するために、「なるべく子どもを産みたいと思う話をしよう!」という風潮になっているようです。でもどうして既に中学生たちは、その年齢で「結婚したくない」「子どもを産みたくない」と思っているのでしょうか?  
     『SRHR』という言葉を知っていますか。英語のSexual and Reprod
    uctive Health and Rightsの頭文字をとったもので、日本語では、「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。具体的に言うと、Sexual Health(性の健康)=自分の「性」に関することについて、心身ともに満たされて幸せを感じられ、またその状態を社会的にも認められていること。Reproductive Health(生殖の健康)=妊娠したい人、妊娠したくない人、産む・産まないに興味も関心もない人、アセクシャルな人(無性愛、非性愛の人)問わず、心身ともに満たされ健康にいられること。Sexual Rights(性の権利)=セクシュアリティ「性」を、自分で決められる権利のこと。自分の愛する人、自分のプライバシー、自分の性的な快楽、自分の性のあり方(男か女かそのどちらでもないか)を自分で決められる権利のこと。Reproductive Rights(生殖の権利)=産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを自分で決める権利。妊娠、出産、中絶について十分な情報を得られ、「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利のこと、です。また、これらの権利は、『生まれながらに持つべき権利(人権)』であり、どう人生設計するのかは個人個人が決めたらよいことではあるが、そのためには十分な情報を各自がしっかりと得る必要があることも明記されています。
    3月8日は国際女性デーでもありました。それにちなんで『SRHR』についてタレントのIMALUさんが中心になってやっているYouTube番組「ハダカベヤ」に出させていただきました。もし良かったら、3月25日から公開されていますので見てみてくださいね!
     「結局は未来の産んだ子どもの生活に不安があるから産まないんだよ」という意見でその場にいた友人たちがみんな納得したんだよと教えてくださった方がいます。中学生たちも同じなのでしょうか? 何が不安なのか、なぜこれから子どもを産む年齢の若い人たちがそう思うのかをもっと政府が汲み取らなければ、とても少子化は解決しそうにありません。私も講演活動を通じて、今後そのあたりを追求していきたいと思います。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2024年3月30日号

  • 正規職員と非正規職員、待遇格差の改善を

    教育支援員54人?

    村山 朗 (会社員)

     地元紙の1面に十日町市の新年度予算の記事が掲載されていました。見出しは「子育て・教育に細かく展開」とありました。私立保育園・こども園の支援、子育て支援の充実、学校教育の充実、特色ある教育活動の推進、などです。馬場小学校が来年度末で閉校になるため、閉校支援予算もありました。筆者がかつて通ったT小学校も地域の役員の話では、新1年生の入学がついに30人を切り、1クラスになるそうです。半世紀以上も前の話ですが、1学年に250人以上もいましたので、少子化が加速してまるで別の国のはなしを聞いているような気がします。 
     過日「十日町市立中学校のあり方についての提言」が公表され、小学校に次いで中学校も改廃論議の現実味が増してきました。今回の予算案に戻ると、校舎の整備・更新などに次ぐ予算額で目を引いたのが、「学校生活や適切な学びの場をサポートする教育支援員を8名増やし54人を配置」という項目です。予算額約1億2千万円。市の公開資料には教育支援員は50人に満たず、中々応募がなくて大変だ、との記述があります。そんな状況の中で8人増やす(増やせる)というのは何か秘策でもあるのでしょうか。
     支援が必要な子供が増えている(これも公開情報より)中で教育支援員を増やすという計画なのでしょうが、1億2千万円を54人で割ると1人当たり約220万円です。コロナ禍の時期に話題になったエッセンシャルワーカーという言葉がありますが、教育支援員も学校教育のエッセンシャルワーカーではないかと思います。
     エッセンシャルワーカーには非正規社員(職員)が多く、賃金も低いという報道もよく目にしました。なぜ大切な仕事をしている人の賃金が低いのか、低賃金は当然なのでしょうか。昨今賃上げが好調だと報道されていますが、非正規のエッセンシャルワーカーの待遇改善は置き去りにされているような気がします。
     十日町市の正規職員は500人余りで、平均給与は550万円前後。非正規職員の人数もほぼ同数。この教育支援員の予算からわかるように、市の非正規職員の待遇はとても良くない上に、採用期間も1年区切りです。 正規職員が頑張ればいいじゃないかと皮肉の一つも言いたくなりますが、非正規職員のなり手がいなくなれば、正規職員も働き方改革どころではありません。市として非正規職員の待遇改善に大きく力を入れるべきではないでしょうか。
     そして誰もいなくなった、となりませんように。

    2024年3月30日号

  • 『街の日常にもっときものを』

    河田 千穂さん(1993年生まれ)

     桜が満開になる4月中旬過ぎに、街をきもので歩くイベントを企画している。「以前、ネットを通じてアンケートをしました。きものについて一番困っていることのトップは、きものを着る機会、場がないという回答でした。きものが好きな方が多い街ですから、もったいないですね」。
     このきものは知人から譲り受けた「小紋」。幼少期から絵を描くことが好きで、大学では服飾関係のテキスタイル・デザインを専攻。「そのままデザイン系に進むと自分では思っていましたが、『るろうに剣心』との出会いで、和の世界観、きものへの関心が増し、思いはさらに増しています」。
     学生時代に刺激を受け、「推し」バンドになった『デッド・オア・アライヴ』のボーカルの世界観に魅かれ、「追っかけでロンドンを何往復もしました」。大学卒後の進路は「路線変更」。すぐに就職せず、都内の料亭でバイトし、推しバンドのライブ日程に合わせロンドンへ。渡り鳥生活を1年余り続ける。「ロンドンでは、日本文化を通じて和の雰囲気をさらに感じ、きものを着ていると、きものを『作品』と見てくれます。これだ、と思いました」。
     きもの関連企業をリサーチし、十日町市の「きものブレイン」でテキスタイルデザイナーとして入社。在社中に地元の十日町服飾専門学校に通い、実務3年以上で受験できる「着付け師」資格を取得。同じ会社でパートナーと出会い退社。きものレンタル『kcda』(クダ)を立ち上げ、成人式の前撮りやきものイベントで着付を担当している。kcdaはKawadaChihoを入れ替えアレンジした。
     好きな「絞り」や「小
    紋」「訪問着」「振袖」など100着ほど持つ。専用クローゼットに三つ折りでハンガーに吊るし保管している。
     「飲み会も多いので、そういう時は周りに気を使わせないようにポリエステルのきもので行きます。タイムスリップできれば、るろうに剣心の時代に行きたいですね」。聖地巡礼で会津若松を何度も訪れている。
     絵も好きで、昨年の十日町きものまつりでは路上ライブ・ペイントを行い、出没で話題になった熊を自分のイメージで描いた。「なかなか描いている時間がないですね」。
     「私は歴史が好きで、バックグラウンドがあるものに魅かれます。歴史と伝統があるきものです。雪まつり、きものまつり、もっとファッションショーに力を入れてもいいのでは。きものを身近なものにしていきたいですね。街なかで日常的にきもの姿が見られれば、もっとすてきな雰囲気の街になるのではないでしょうか」。
    ◆バトンタッチします。
     「廣田伸子さん」

    2024年3月30日号

  • ナラハヒラタマルタマフシ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     皆さんは山の中でこんな不思議な赤い実を見たことはありませんか?
     この写真は9月に撮影したものですが、ナラの葉っぱの上に違和感を感じるようにくっついているこの実。
     パッ見ると美味しそうにも見えますが、実はこれはナラハヒラタマルタマバチという体長1㎜ほどの小さな羽の無いハチの卵だそうです。
     この赤い実のように虫に寄生され、植物組織が異常な発達を起こしてできるこぶ状の突起のことを「虫えい」または「虫こぶ」と言い、タマバチの寄生で起こる虫えいをナラハヒラタマルタマフシと呼びます。
     ナラハヒラタマルタマバチは幼虫から成虫へと羽化するまで虫えいの中で過ごします。6~7月ごろ産卵が始まり、8~9月にかけて幼虫が入ったまま赤い実のような虫えいが落下し、その虫えいの中で内側を食べながら成長・越冬し、翌年4~5月に成虫となり羽化するそうです。
     長引いていた雪も本当に終わりが見え、春の日差しを感じる日が多くなってまいりました。ナラハヒラタマルタマフシを破って小さなハチが出てくる季節です。目にはきっと見えませんが山菜取りなどで山に入った時思い出してもらえたら嬉しいです。

    2024年3月30日号

  • 「ご近所付き合いの大切さ」力説

    「激震お見舞い」を考える

    松崎 房子 (元ゆずり葉編集委員)

     能登大地震から程なく四ヵ月になろうとした頃、やっと電話がかけられた。
     元日に起きた能登地震、わが長男の嫁さんの実家も小松市にあって、大騒ぎになった。彼女を通じて小松の皆様は、とりあえずはご無事である事はすぐわかった。
     もう一人案じた人が居た。十日町在住の昔から親交のあった知人が能登七尾市にお住まいだ。携帯番号は知らない。TVに映し出される様子は、目を覆うばかり。電話すべきではない状況と判断し、しばらく経ってからと思った。一向に状況は良くならない。もし電話が通じても、どう話したらよいのか? どんな状況なのか? とても聞けそうもない。折に触れてのカンパをする位しか出来なかった。
     後ろめたさにつぶされそうになりながら、時だけは容赦なく過ぎた。三月末、恐る恐る電話した。それでも明るい元気そうな声で奥様が出て下さった。ご主人は農業をなさっているので、夜七時半位だったが既に床に就かれたとか。
     奥様は少し興奮気味で、状況を少しずつ話して下さった。避難所から帰宅したばかり。未だ家は壊れたままの所もあり、不自由な事ばかりだとか。近所で助け合ってなんとか暮らしています。ご近所の有難さを実感しています。とおっしゃった。
     電話を切って、ほっとする部分があり、結局は自分の気休めである事に気が付き、また後ろめたさに責められている。
     阪神淡路の時は友人知人が大勢いるので本当に心配した。メディアは盛んに〈不要不急の電話は掛けるな〉と声を大にする。が、絶対必要なのだからと言い訳しつつ、かけまくった。全く繋がらない。
     次は中越地震。十日町にも友人知人ばかり、電話を掛けまくったがやはりダメ。ある瞬間、繋がった。あまりに寒いので防寒具を取りに来たところよ、みんな無事だから安心してと言われた。その次は熊本地震。娘婿さんの実家。娘夫婦を通じて皆さんの無事を知る事ができホッとした。
     阪神淡路大震災の後、ボランティア元年と言われ、いろんな事が少しずつ定義づけられるようになった。ボランティア活動はわが身の事は全部我が身で処し、被災者に迷惑をかけない事を大前提とする。年を重ねた今となっては、お見舞いに行く事も差し控えねばならない。
     全国あちこちで地震が起き、無事・安全な地域はないみたい。いつ我が身に降りかかるかもしれない。七尾の奥様はご近所付き合いの大切さを力説。千葉も揺れているみたいだから気を付けてね、と反対に注意された。現在の当地は、ご近所付き合いが希薄。大問題だ。

    2024年4月6日号

  • 軌道と灌漑水路

    小林 幸一(津南案内人)

     津南町自然に親しむ会のスノーシ
    ュートレッキングで穴藤の鉄橋跡を見た際に、対岸にも石垣のような遺構が残っているので調査しようにも川は渡れず、周囲は崖に囲まれているので、翌週に見玉の石落としの方から向かってみました。
     法務局の地図ビューアーでは百年前と思われる山道が登記されているので、残雪の中に旧道を探し、荒れ果てた山道を川原まで降りると灌漑水路跡や軌道跡がハッキリと残っていました。
     中津川電源開発では新潟県知事から水利使用の許可が下りた際に、正面ヶ原への旧用水への補給が義務付けられていましたが、工事軌道と合わせて工事をしたために8カ所の隧道の管理上の問題や、中津川に近いことから大水で何度も流されました。
     他にも水門の開閉権が電力会社側にあったことから十分な用水は得られず幾度も水不足になりました。(津南町史より)
     今までの
    写真エッセイの中から中津川発電所工事をまとめたレポートが「津南学vol.12」の中に掲載して頂きました。「秋山郷の電源開発―百年後の出逢い」と題した33ページに及ぶ集大成ですので興味のある方はご覧ください。

    2024年4月6日号

  • 小さな集落の古民家パン屋さん

    津南町鹿渡新田「ヤナギヤ」

    国産小麦と旬食材、金谷夫妻11日オープン

     築120年余の古民家にパン屋さんがオープンする。津南町と十日町市の境にある、12世帯が暮らす津南町鹿渡新田。その一角にパンとお菓子の店『ヤナギヤ』が今月11日オープンする。店主の金谷日向さん(34)は「この地域の皆さんにとってのちょっとしたお出かけ先のひとつになりたいですね。地域の元気や楽しみに繋がる場所になれれば」と笑顔をみせる。日向さんがパンやお菓子を作り、夫の恭平さん(31)がサポート。小さな集落に生まれるパン屋さんの取り組みが関心を呼んでいる。

    2024年4月6日号

  • 危うい、地方自治法改正

     またも「その他」の危うさが表出している。国と地方の関係を『対等』と法で規定する地方自治法。その改正案が今国会に提案された。改正案の中で『指示権』を拡大し、国の裁量を広げる余地を作った。それが『その他』。改正案では国が指示権を発動できる場面として「大規模な災害」「感染症の蔓延」「その他」とする。この「その他」は『国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、または発生する恐れがある場合』と、字面は一般的な表現だが、それは逆に「国・政府の解釈による裁量部分が広がり『思いのまま』の指示権」となる怖れがある。相当なる危うさが秘められている。
     なぜ国・政府は地方自治法の改正に踏み切るのか。その説明では新型コロナウイルス感染拡大の時の国と地方の関係性から見える教訓を上げる。新型コロナ禍で地方が国方針に異を唱えたことが、改正論議を進め、首相の諮問機関で政権の後押し機関でもある地制調・地方制度調査会が昨年12月、「必要な指示を行えるように」と答申し、今国会への改正案提出となった。
     一方的な指示権ではないにしろ、事前に地方自治体の意見を聞くなど「適切な対応に努めなければならない」との文言はあるが、適切な対応とは、ここもかなり危うい。『その他』の範囲は政府の裁量にあり、相当に広い解釈が可能になっている。
     この国の危うさは、憲法の解釈を都合良く「拡大解釈」や「独自解釈」により、有事法制や最近の武器輸出など、法治国家を逆手にとった政策がまかり通っている現実にあり、相当に危うい。
     今国会に提案の地方自治法改正、これまでの「対等」から「上下・主従」を含ませた改正案である点は、とても看過できない。国政策をゴリ押ししたマイナンバー、その登録率を地方交付税交付に反映など、指示権につながる危うさだ。地方の声上げの時だ。

    2024年4月6日号

  • 「早期開通を」、中京・関西圏繋ぐ

    トンネル貫通、供用開始3年後

    灰雨バイパス

     改良により地域の安心安全道路であり、中京圏や関西圏と妻有地域を繋ぐ物流・交流道としての期待が高まっている国道117号「灰雨バイパス(仮称)」(延長1180㍍、トンネル827㍍)。昨年11月にトンネルが貫通。さらなる整備促進が求められるなか、貫通式は27日に現地で実施。供用開始は3年後の2027年度(令和9年度)を見込んでいる。住民は「いまの灰雨スノーシェッドは狭い。安全に通行できるよう早くバイパス化してほしい」と早期開通に期待している。

    2024年3月30日号

  • 「まずは一歩」、広域連携で

    結婚支援「ハピ婚」に津南町も

     全国的に社会問題として深刻化している地方の人口減少。その要因に挙げられているのが『未婚者』の増加。十日町市は昨年、新たな婚活支援で小千谷市との広域連携に取り組み、婚活イベントや婚活支援センター登録者同士のマッチングで、合わせて11組が誕生するなど連携効果が出ている。新年度はさらに津南町が連携に加わることになり、十日町市の結婚支援センターは『越後妻有ハピ婚サポートセンター』に名称変更して取り組む。栄村でも十日町市や津南町で働く人は会員登録できることから、より広域的な効果が期待され、人口対策の決め手になるか関心が集まる。

    2024年3月30日号

  • 中学生の疑問、「なぜ結婚を…」「なぜ子を産むの…」

    You tube「ハダカベヤ」にゲスト出演

    vol 95

     実家の十日町市に戻ってきてから、母のやっていた講演会活動を引き継いで、かれこれ16年目に入ります。最近、中学校で性のお話講演会をさせていただくときに、この質問よく受けるなあというものがあります。それは、「必ず結婚しないとダメですか?」「子どもを産まないとダメですか?」です。
     先月2月27日に厚生労働省は人口動態統計の速報値を公表し、それによると2023年の出生数は過去最少の75万8631人(前年比マイナス1万116人)で、 婚姻件数も戦後初めて50万組を下回り、48万9281組となったとのこと。これは国立社会保障・人口問題研究所の推計より、およそ12年早いペースで少子化が進んでいるということなのだとか。16年前にちょうど「草食系男子」ということばが流行語大賞になりましたが、今の様子は草食系を通り越して「絶食系」に近いともいえます。
     性のお話講演会は全国的に、以前は怖がらせて安易な性行為はやめさせよう、といった傾向が強かったのですが、最近は少子化を少しでも解消するために、「なるべく子どもを産みたいと思う話をしよう!」という風潮になっているようです。でもどうして既に中学生たちは、その年齢で「結婚したくない」「子どもを産みたくない」と思っているのでしょうか?  
     『SRHR』という言葉を知っていますか。英語のSexual and Reprod
    uctive Health and Rightsの頭文字をとったもので、日本語では、「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。具体的に言うと、Sexual Health(性の健康)=自分の「性」に関することについて、心身ともに満たされて幸せを感じられ、またその状態を社会的にも認められていること。Reproductive Health(生殖の健康)=妊娠したい人、妊娠したくない人、産む・産まないに興味も関心もない人、アセクシャルな人(無性愛、非性愛の人)問わず、心身ともに満たされ健康にいられること。Sexual Rights(性の権利)=セクシュアリティ「性」を、自分で決められる権利のこと。自分の愛する人、自分のプライバシー、自分の性的な快楽、自分の性のあり方(男か女かそのどちらでもないか)を自分で決められる権利のこと。Reproductive Rights(生殖の権利)=産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを自分で決める権利。妊娠、出産、中絶について十分な情報を得られ、「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利のこと、です。また、これらの権利は、『生まれながらに持つべき権利(人権)』であり、どう人生設計するのかは個人個人が決めたらよいことではあるが、そのためには十分な情報を各自がしっかりと得る必要があることも明記されています。
    3月8日は国際女性デーでもありました。それにちなんで『SRHR』についてタレントのIMALUさんが中心になってやっているYouTube番組「ハダカベヤ」に出させていただきました。もし良かったら、3月25日から公開されていますので見てみてくださいね!
     「結局は未来の産んだ子どもの生活に不安があるから産まないんだよ」という意見でその場にいた友人たちがみんな納得したんだよと教えてくださった方がいます。中学生たちも同じなのでしょうか? 何が不安なのか、なぜこれから子どもを産む年齢の若い人たちがそう思うのかをもっと政府が汲み取らなければ、とても少子化は解決しそうにありません。私も講演活動を通じて、今後そのあたりを追求していきたいと思います。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2024年3月30日号

  • 正規職員と非正規職員、待遇格差の改善を

    教育支援員54人?

    村山 朗 (会社員)

     地元紙の1面に十日町市の新年度予算の記事が掲載されていました。見出しは「子育て・教育に細かく展開」とありました。私立保育園・こども園の支援、子育て支援の充実、学校教育の充実、特色ある教育活動の推進、などです。馬場小学校が来年度末で閉校になるため、閉校支援予算もありました。筆者がかつて通ったT小学校も地域の役員の話では、新1年生の入学がついに30人を切り、1クラスになるそうです。半世紀以上も前の話ですが、1学年に250人以上もいましたので、少子化が加速してまるで別の国のはなしを聞いているような気がします。 
     過日「十日町市立中学校のあり方についての提言」が公表され、小学校に次いで中学校も改廃論議の現実味が増してきました。今回の予算案に戻ると、校舎の整備・更新などに次ぐ予算額で目を引いたのが、「学校生活や適切な学びの場をサポートする教育支援員を8名増やし54人を配置」という項目です。予算額約1億2千万円。市の公開資料には教育支援員は50人に満たず、中々応募がなくて大変だ、との記述があります。そんな状況の中で8人増やす(増やせる)というのは何か秘策でもあるのでしょうか。
     支援が必要な子供が増えている(これも公開情報より)中で教育支援員を増やすという計画なのでしょうが、1億2千万円を54人で割ると1人当たり約220万円です。コロナ禍の時期に話題になったエッセンシャルワーカーという言葉がありますが、教育支援員も学校教育のエッセンシャルワーカーではないかと思います。
     エッセンシャルワーカーには非正規社員(職員)が多く、賃金も低いという報道もよく目にしました。なぜ大切な仕事をしている人の賃金が低いのか、低賃金は当然なのでしょうか。昨今賃上げが好調だと報道されていますが、非正規のエッセンシャルワーカーの待遇改善は置き去りにされているような気がします。
     十日町市の正規職員は500人余りで、平均給与は550万円前後。非正規職員の人数もほぼ同数。この教育支援員の予算からわかるように、市の非正規職員の待遇はとても良くない上に、採用期間も1年区切りです。 正規職員が頑張ればいいじゃないかと皮肉の一つも言いたくなりますが、非正規職員のなり手がいなくなれば、正規職員も働き方改革どころではありません。市として非正規職員の待遇改善に大きく力を入れるべきではないでしょうか。
     そして誰もいなくなった、となりませんように。

    2024年3月30日号

  • 『街の日常にもっときものを』

    河田 千穂さん(1993年生まれ)

     桜が満開になる4月中旬過ぎに、街をきもので歩くイベントを企画している。「以前、ネットを通じてアンケートをしました。きものについて一番困っていることのトップは、きものを着る機会、場がないという回答でした。きものが好きな方が多い街ですから、もったいないですね」。
     このきものは知人から譲り受けた「小紋」。幼少期から絵を描くことが好きで、大学では服飾関係のテキスタイル・デザインを専攻。「そのままデザイン系に進むと自分では思っていましたが、『るろうに剣心』との出会いで、和の世界観、きものへの関心が増し、思いはさらに増しています」。
     学生時代に刺激を受け、「推し」バンドになった『デッド・オア・アライヴ』のボーカルの世界観に魅かれ、「追っかけでロンドンを何往復もしました」。大学卒後の進路は「路線変更」。すぐに就職せず、都内の料亭でバイトし、推しバンドのライブ日程に合わせロンドンへ。渡り鳥生活を1年余り続ける。「ロンドンでは、日本文化を通じて和の雰囲気をさらに感じ、きものを着ていると、きものを『作品』と見てくれます。これだ、と思いました」。
     きもの関連企業をリサーチし、十日町市の「きものブレイン」でテキスタイルデザイナーとして入社。在社中に地元の十日町服飾専門学校に通い、実務3年以上で受験できる「着付け師」資格を取得。同じ会社でパートナーと出会い退社。きものレンタル『kcda』(クダ)を立ち上げ、成人式の前撮りやきものイベントで着付を担当している。kcdaはKawadaChihoを入れ替えアレンジした。
     好きな「絞り」や「小
    紋」「訪問着」「振袖」など100着ほど持つ。専用クローゼットに三つ折りでハンガーに吊るし保管している。
     「飲み会も多いので、そういう時は周りに気を使わせないようにポリエステルのきもので行きます。タイムスリップできれば、るろうに剣心の時代に行きたいですね」。聖地巡礼で会津若松を何度も訪れている。
     絵も好きで、昨年の十日町きものまつりでは路上ライブ・ペイントを行い、出没で話題になった熊を自分のイメージで描いた。「なかなか描いている時間がないですね」。
     「私は歴史が好きで、バックグラウンドがあるものに魅かれます。歴史と伝統があるきものです。雪まつり、きものまつり、もっとファッションショーに力を入れてもいいのでは。きものを身近なものにしていきたいですね。街なかで日常的にきもの姿が見られれば、もっとすてきな雰囲気の街になるのではないでしょうか」。
    ◆バトンタッチします。
     「廣田伸子さん」

    2024年3月30日号

  • ナラハヒラタマルタマフシ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     皆さんは山の中でこんな不思議な赤い実を見たことはありませんか?
     この写真は9月に撮影したものですが、ナラの葉っぱの上に違和感を感じるようにくっついているこの実。
     パッ見ると美味しそうにも見えますが、実はこれはナラハヒラタマルタマバチという体長1㎜ほどの小さな羽の無いハチの卵だそうです。
     この赤い実のように虫に寄生され、植物組織が異常な発達を起こしてできるこぶ状の突起のことを「虫えい」または「虫こぶ」と言い、タマバチの寄生で起こる虫えいをナラハヒラタマルタマフシと呼びます。
     ナラハヒラタマルタマバチは幼虫から成虫へと羽化するまで虫えいの中で過ごします。6~7月ごろ産卵が始まり、8~9月にかけて幼虫が入ったまま赤い実のような虫えいが落下し、その虫えいの中で内側を食べながら成長・越冬し、翌年4~5月に成虫となり羽化するそうです。
     長引いていた雪も本当に終わりが見え、春の日差しを感じる日が多くなってまいりました。ナラハヒラタマルタマフシを破って小さなハチが出てくる季節です。目にはきっと見えませんが山菜取りなどで山に入った時思い出してもらえたら嬉しいです。

    2024年3月30日号